朝どれソング

2021年オペラシアターこんにゃく座は創立50周年を迎えました。 2018年7月から2020年6月まで、「朝どれソング」として毎月2曲ずつソングをお届けしてきましたが、今年は創立50周年を記念して「朝どれソング 合唱版」と題し、1月、4月、7月、10月と年4回、各月3曲ずつ、林光と萩京子の合唱曲をお届けします。

★朝どれソングとは...★

林光、萩京子の作曲したソングをこんにゃく座歌役者が歌います。 とれたてのみずみずしい食べ物のように、みなさんのエネルギーの源になることを願って。
今月のソング(2021年1月7日公開)

♪パレード
♪すき(新曲)
♪明日ともなれば


映像:和久井幸一

【萩京子・極私的作品解説】

パレード
詩:朝比奈尚行、曲:萩京子
歌:全員

1990年8月16日、こんにゃく座inジァン・ジァン『真夏の夜の饑餓陣営』公演で初演。
萩が朝比奈尚行氏に詩を依頼して書いてもらった最初の曲。
リコーダー2本とトムトムが大中小の3台あれば、タイトルの通りパレードしながら演奏することができる。
この曲はさまざまな国のさまざまな都市で演奏し、街を練り歩いた。

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パレード

パレードの報せが届いた
少年は窓辺で待った

テーブルのコップの水が波立ちはじめたとき
少年はおもいだした
本でみた愉快な小さなパレードのことを

窓ガラスがピキピキ割れはじめたとき
少年はおもいだした
父から聞いた長い厳かなパレードのことを

庭のプールがザブンと水を放り出したとき
少年はおもいだした
友達も中にいた暗いパレードのことを

家が地面の割れめにのみこまれたとき
少年はおもいだした
立ちすくみ一歩も進めなくなったパレードのことを

街が崩れてあらわになった地平線から
やがて土埃とともに姿をみせたパレードは
死んだ人とこれから生まれてくる人たちでいっぱいだった
かれらの背丈はゆうに10メートルを超えていたが
それがパッパラ無数のラッパを吹き鳴らしながら跳ねるように行進するので
大地の揺れはますます激しくなった
またかれらが連れている鼻の短い象のような動物が
背中にあいた穴からズポッ、ズポッと炎の固まりを吹き上げると
そのたびに空はあざやかに色を変えるのだった

巨大なパレードはいつ果てるともなく続いたが
じつのところ少年はこのパレードをみることができなかった
かれはもうずっとまえから目を閉じていた
死んでいるのではない
眠っているのだ
揺れる大地の上を崩れ落ちた瓦礫と一緒に弾かれ転がりながら



すき
詩:谷川俊太郎、曲:萩京子
歌:青木美佐子、佐藤敏之、島田大翼、北野雄一郎、沖まどか、飯野薫、鈴木あかね、泉篤史

無伴奏混声合唱曲。
詩は「すき」(理論社)に収録されているのが多分初出だが、萩は童話屋の「ぼくは ぼく」でこの詩を発見した。曲は朝どれソング合唱版のための書き下ろし。
無伴奏混声合唱曲ということばはいかめしいのでこの曲にはちょっと似合わない。
でも無伴奏であることは確かだし、混声四部合唱として作曲されていることも確かである。
この詩がとても「すき」だ。

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すき

すき
ゆうがたのはやしがすき
まよってるありんこがすき
りんごまるごとかじるのがすき
ひざこぞうすりむくのも
いたいけどすき

すきなものすきなこと ずっとすきでいたい
きらいなものもあるけど
いつかそれもすきになるかもしれない

すき
おかあさんすき
いつもけんかしてるけどすき
おつきさますき
おひさますき
ほしみんなすき
かぞえきれないけれど



明日ともなれば
詩:フェデリコ・ガルシア・ロルカ、
訳:長谷川四郎、曲:林光
歌:大石哲史、梅村博美、相原智枝、岡原真弓、髙野うるお、沢井栄次、金村慎太郎、小林ゆず子、荒井美樹

ロルカの詩、「新しい歌」は4行ずつ6つのかたまりがある。
林光はそのなかの3つのかたまり「あすともなれば~」、「光りかがやいて~」、「もろもろの物~」ではじまる部分を1981年にソングとして作曲し「新しい歌」というタイトルにした。それぞれが1番2番3番となっている。有節歌曲の書き方だ。
そして1986年にその部分を生かしつつ、詩全体を混声四部合唱曲として作曲した。
その際に曲のタイトルを「明日ともなれば」にした。
新しく作曲された部分は、女声と男声のかけあいがあったり、無伴奏の聞かせどころがあったりする。
そして曲中に三度登場するもとのソングの部分は単旋律のままだ。(3番の後半は2声になっているが)
合唱曲のなかに現れる単旋律のちからはすごい。
その旋律がすてきでなければ話にならないが、この曲の場合はぞくっとするほどだ。

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明日ともなれば

昼過ぎが言う-影を飲みたい!
月は言う-飲みたいのは星の輝き
澄みきった泉は唇をもとめ
風がもとめるのはため息

匂い 笑い 新しい歌
これがぼくの飲みたいものだ
月だとかユリの花だとか
死んだ愛などから自由な歌だ

あすともなれば一つの歌が
未来の静かな水面をゆさぶり
そのさざ波とぬかるみを
希望でふくらますだろう

光り輝いておちついて
思想に満ちた一つの歌
悲しみや苦しみやまぼろしに
まだよごれていない一つの歌

抒情的な肉体なしに
笑い声で静寂を満たす歌だ
(未知のものへと放たれた
めくらのハトの一群だ)

もろもろの物 もろもろの風
その中心にせまる歌だ
とこしえの心の喜びに
最後にはやすらう歌だ

♪ゆめ売り/♪明るいほうへ
2018-07-07


♪あくび/♪電車
2018-08-07


♪わたしのお月さま/♪枯れたオレンジの木のシャンソン
2018-09-07


♪餞/♪朝に晩に読むために
2018-10-07


♪唄/♪電線工夫
2018-11-07


♪うたかたのジャズ/♪青いカナリア
2018-12-07


♪空をかついで/♪小さな草
2019-01-07


♪しあわせはこぶ銀のロバ/♪暗い柳の木立のかげ
2019-02-07


♪ねむり/♪馬
2019-03-07


♪ジャストマイサイズ/♪帽子屋さんの子守歌
2019-04-07


♪水はうたいます/♪ひびかせうた
2019-05-07


♪雨/♪わたしの好きな歌
2019-06-07


♪石ころの歌/♪告別
2019-07-07


♪魚のいない水族館/♪舟のうた
2019-08-07


♪赤い魚と白い魚/♪ちょうちょうさん
2019-09-07


♪花のうた/♪ぼくがつきをみると
2019-10-07


♪わたしのすきなこなひきさん/♪やさしかったひとに
2019-11-07


♪銀河の底で歌われた愛の歌/♪サザンクロスの彼方できこえた父が息子にあたえる歌
2019-12-07


♪グランド電柱/♪だれが鈴をつけにいくのか
2020-01-07


♪舟唄/♪影とまぼろし
2020-02-07


♪つまさききらきら/♪月の船の歌
2020-03-07


♪運命のジャズ/♪旗はうたう
2020-04-07


♪壁のうた/♪行ってしまったあんた
2020-05-07


♪ものがたり/♪夢
2020-06-07



♪パレード/♪すき/♪明日ともなれば
2021-01-07


♪うた/♪しぬまえにおじいさんのいったこと/♪なぞなぞうた
2021-04-07


♪見えない月/♪みえないあみ/♪朝のパン
2021-07-07


♪飛行機よ/♪みみがさわる/♪果てしない波を渡るための歌
2021-10-07

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