朝どれソング
朝どれソングとは...
ソングを毎月7日に2曲ずつ、二年間かけてお届けします。まずは萩京子作曲のソングを24曲、そして林光作曲のソングを24曲。とれたてのみずみずしい食べ物のように、みなさんのエネルギーの源になることを願って。
今月のソング(2019年9月7日公開)
♪赤い魚と白い魚〈島田大翼〉
♪ちょうちょうさん〈鈴木裕加〉
映像:和久井幸一
【萩京子・極私的作品解説】
赤い魚と白い魚
詩:関根弘、曲:林光
1958年、林光27才のときの曲。60年安保以前。光さんはこの年、後に「原爆小景」の第1章となる「水ヲ下サイ」を作曲している。作風としては現代音楽真っただ中にいながら、片方でこんな小さな愛らしい曲を書いていたのか。
極私的と言えば最も極私的なことで言えば、「赤い魚と白い魚」は、私の林光ソングファイルの1曲目に入っている。理由は単純、曲名が「あ」から始まるからなのだが。コピー楽譜の整理を始めたのが1980年代初めで、そのころ持っていた林光ソングを「あいうえお」順にまとめたら、「赤い魚と白い魚」が一曲目に収まった。その後「あいうえお」順は崩れ、入手するごとに楽譜を入れて行くので、もう今では見たい楽譜を探すのが困難になってしまった。すべてを「あいうえお」順に整理すれば良いのに、それをしていない。ファイルは8冊。「赤い魚と白い魚」は1冊目の1曲目だから、しょっちゅう私の目に触れるところに存在していた。
この楽譜を手にしてから、この曲を演奏する機会を得るまでに20年以上経ってしまったような気がする。記憶違いだろうか?だが、何かのきっかけでこの曲がとても好きになった。ピアノ部分がとてもきれいで、こんなにきれいでなくても良いのに、と思うくらいきれいだ。実は詩の意味はよくわからない。詩のなかでも言っている。「海にきいてもわかんない」。まったくそんな感じです。この「海にきいてもわかんない」の「わかんない」の音のつけ方は楽譜どおりにやるより、この「朝どれソング」の映像で島田大翼が歌っているように「わかーんない」と歌うのが良いと思っている。この歌い方はどうも大石哲史が始めたようなのだが、楽譜と違うということにまったく気づかなかった。楽譜どおりに「わかんない」と歌われると変な気がしてしまう。(楽譜どおり歌わないことを推奨しているわけではありません。念のため。)
詩人の関根弘さんとは、生前ほんの少し接点があったような気がするが、あまりお話しないままになってしまった。「赤い魚と白い魚」の意味をお聞きすれば良かった。そして、今さらながら林光さんにも聞いてみたい。この話すように歌う歌、オペラの入り口のような歌が、どうしてできたのか。
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赤い魚と白い魚
青い海の
赤いお魚
赤いお皿でむかえましょ
赤いお魚ばかりなら
白いお皿はこわしましょ
青い海の
白いお魚
白いお皿でむかえましょ
白いお魚ばかりなら
赤いお皿はこわしましょ
でもわかんない
どっちが来るか
赤い魚か白い魚か
海にきいてもわかんない
海のへんじはただ青い
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ちょうちょうさん
詩:まど・みちお、曲:林光
童謡で「ちょうちょう」と言えば、おなじみの「ソミミ、ファレレ、ドレミファソソソ」の「ちょうちょう」が浮かんでしまう。子どものころ、「ちょうちょう」に代表されるような単純なメロディー、単純な和音進行の童謡が大嫌いだった。「むすんでひらいて」なども。「こんな歌、歌わせないでよ。」と思っていた。おとなになって「むすんでひらいて」がジャン・ジャック・ルソーの作曲だということを知ったりすると、別の興味も沸くのだが。「ちょうちょう」はドイツの童謡にまったく別の日本語の歌詞を乗っけたもので、日本の西洋音楽ことはじめのひとつのステップとして定着した歌だ。私が今さら悪口を言っても始まらないし、今では単純さを尊重しなければ、と思う。
さて、それはともかく、まど・みちおさんの詩には「かみさま」が時々登場する。この「ちょうちょうさん」にも。
「かみさまがごらんになっているかもしれないゆめ」とか「かみさまがうたっていらっしゃるかもしれないうた」とか、なかなかやっかいな表現である。
「かみさま」とひとくちで言っても、いろいろな「かみさま」がいて、そのひとりなのか?
それともたったひとりの「かみさま」なのか?
「かみさま」問題は、戦争が起きるほどやっかいなのである。
だがふしぎなことに、まどさんの手にかかると、実はあまり気にならなくなってしまう。
「はなから うまれてきたの?ちょうちょうさん」という語りかけですべてを乗り越えてしまう。
「ちょうちょうさん ちょうちょうさん」と語りかけ、「はなにやすんできれいです」と続くところ、Eの属和音からGの和音に飛ぶのが好きです。親戚の和音にちょっと行くわけです。
作曲は1998年、オペラ『吾輩は猫である』を作曲した年。
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詩を表示
ちょうちょうさん
はなから うまれてきたの?
ちょうちょうさん
ちょうちょうさん
はなに やすんで きれいです
はなを まわって きれいです
かみさまが
ごらんになっているかもしれない
ゆめのよう
かぜからうまれてきたの?
ちょうちょうさん
ちょうちょうさん
かぜに ながれて きれいです
かぜに ひかって きれいです
かみさまが
うたっていらっしゃるかもしれない
うたのよう
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