朝どれソング
朝どれソングとは...
ソングを毎月7日に2曲ずつ、二年間かけてお届けします。まずは萩京子作曲のソングを24曲、そして林光作曲のソングを24曲。とれたてのみずみずしい食べ物のように、みなさんのエネルギーの源になることを願って。
今月のソング(2018年12月7日公開)
♪うたかたのジャズ〈大石哲史〉
♪青いカナリア〈川中裕子〉
映像:和久井幸一
【萩京子・作曲ノート】
うたかたのジャズ
詩:高橋純、曲:萩京子
この歌の発祥地は秋田県横手市。1990年代、私は数年にわたって、何作かの横手市民音楽劇(ミュージカル)創作に関わりました。
横手市在住の高橋純さんが主に台本を担当し、こんにゃく座でもおなじみの加藤直さんが演出で参加、横手の町にまつわる物語を次々に作品化しました。
横手はかまくらの町として有名です。雪がたくさん降ります。
横手の冬もたっぷり体験しました。
ひとつの町に長く滞在すると、あっという間にそこが第二の故郷になります。
この「うたかたのジャズ」は1997年1月上演の浪漫ラプソディー楽劇「美貌(キネマ)の都(外傳)」という作品の劇中歌です。
映画を愛し、映画に心を添わせ、ひとつの時代を映画とともに生きた人々が描かれています。
オーディションで選ばれた横手の方々、客演として新井純さん、大月秀幸さん等も出演しました。
モボやモガが闊歩する時代が描かれたこの作品、ジャズの名曲をもじりつつ、楽しく作曲しました。
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うたかたのジャズ
空を見上げて 涙こらえた
青さが胸に 広がった
ときめきも つかの間の夢
今日の日も いつか昨日に
明日になれば 歌いだす
心奏でる うたかたのジャズ
俯く頬に 熱くこぼれた
青さが胸に しみ込んだ
うたかたに悲しみは過ぎ
昨日から 今日が生まれる
明日待たずに 歌いだす
心奏でる うたかたのジャズ
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青いカナリア
詩:加藤直、曲:萩京子
オペラ『アルレッキーノ~二人の主人を一度に持つと』の中で、パンタローネ家の小間使い、ズメラルディーナによって歌われる歌です。
主人公である道化のアルレッキーノが一目惚れするズメラルディーナは、女の道化としての典型でもあります。
そして、フェミニストの先駆者のような勇ましい内容の歌を歌う〈賢い小間使い〉であり、魅力的な女性でもあります。
〈賢い小間使い〉というキャラクターは、西洋の演劇作品やオペラにおいて、重要な位置を占めることが多々あります。
アルレッキーノは後のフィガロにつながり、ズメラルディーナはスザンナにつながる、というわけです。
原作はゴルドーニですが、オペラ『アルレッキーノ』は、加藤直さんによるオリジナル性の高い台本で、幻想的かつシュールな歌詞が満載です。
それらの歌は、主にザンニという道化4人衆が歌うのですが、そのザンニたちとズメラルディーナによる幕間劇のような場面でこの『青いカナリア』は歌われます。
〈青いカナリア〉には、〈ここではないどこか〉へ行くことへのあこがれ、自由を求める心が託されています。
この歌は、〈いま〉という状況から抜け出したい、〈ここではないどこかへ行きたい〉と感じている私たちの心の一部に一瞬触れて、さっと飛び去っていく鳥のような歌だと思います。
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青いカナリア
青い 青い カナリアが
描かれた 額縁があった
或る日 風が吹いてきて
彼女を額縁から連れ出した
今頃は 憧れの 青空を
自由に ウタを歌いながら
飛んでいるに 違いない
風と戯けながら 青空を
青い 青い カナリアが
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