朝どれソング
朝どれソングとは...
ソングを毎月7日に2曲ずつ、二年間かけてお届けします。まずは萩京子作曲のソングを24曲、そして林光作曲のソングを24曲。とれたてのみずみずしい食べ物のように、みなさんのエネルギーの源になることを願って。
今月のソング(2018年8月7日公開)
♪あくび〈髙野うるお〉
♪電車〈島田大翼、高岡由季〉
映像:和久井幸一
【萩京子・作曲ノート】
あくび
詩:谷川俊太郎、曲:萩京子
「ぼくは四十きみは十」という詩の一行目がステキです。
おとなとこどもが、この詩に描かれているような感じでそばにいられるということがステキです。
向かい合っている、というより並んでいる感じ。
空でも見ているのでしょうか?
「おんなじ時代のおんなじ国に
ぐうぜんいっしょに生きている」
このぐうぜんという言葉にハッとさせられます。
私たちはぐうぜんの重なり合いのなかで生きているんだなあ。
終わりから三行目の「やがてきみは四十ぼく(は)七十」。
30年という年月の重みと、それを軽やかに飛び越える想像力の羽ばたき。
その軽やかさと少しの重たさを、谷川さんのことばに乗せて歌にしたいと思いました。
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あくび
ぼくは四十きみは十
としは少しはなれているけど
おんなじ時代のおんなじ国に
ぐうぜんいっしょに生きている
ぼくは四十きみは十
ならった教科書は少しちがうが
むかしもいまも地球はまわって
朝がくればおはようなのさ
大臣がなんどかわろうが
うそつきはやっぱりいやだな
子犬はやっぱりかわいいな
やがてきみは四十ぼく(は)七十
その時も空が青いといいんだが
いっしょにあくびができるように
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電車
詩:宮澤賢治、曲:萩京子
宮澤賢治は電車や電信柱が大好きですね。山や風や木々や太陽の光や星々と呼吸を合わせて、言葉を紡ぎだすような作業をしていた賢治にとって、もう一方のものたち、文明が生み出した「機械」も、賢治は科学者だけあって、おもしろくて仕方なかったと思います。蓄音機やタイプライターも好きでしたでしょう?
そして電車。電車はいろいろな作品で表現のエッセンスになっています。
この文字通り「電車」と題された詩は、やはり不思議さを持った詩で、電車が語っているのか?電車に乗っている人の目線なのか?遠くに走る電車を見ながら語っているのか?またはそれらのアングルをひょいひょいと移動させているのか?など考えているうちに貧弱カランザなど登場してしまうので、解釈はどうでも良いような気持ちになってしまうのです。
豆畑の風のなか、走っていく電車。
そのイメージが伝われば良いと思っています。
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電車
トンネルヘはいるのでつけた電燈ぢやないのです
車掌がほんのおもしろまぎれにつけたのです
こんな豆ばたけの風のなかで
なあに、山火事でござんせう
なあに、山火事でござんせう
あんまり大きござんすから
はてな、向ふの光るあれは雲ですな
木きつてゐますな
いゝえ、やつぱり山火事でござんせう
おい、きさま
日本の萓の野原をゆくビクトルカランザの配下
帽子が風にとられるぞ
こんどは青い稗を行く貧弱カランザの末輩
きさまの馬はもう汗でぬれてゐる
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