朝どれソング
朝どれソングとは...
ソングを毎月7日に2曲ずつ、二年間かけてお届けします。まずは萩京子作曲のソングを24曲、そして林光作曲のソングを24曲。とれたてのみずみずしい食べ物のように、みなさんのエネルギーの源になることを願って。
今月のソング(2018年7月7日公開)
映像:和久井幸一
【萩京子・作曲ノート】
ゆめ売り
詩:金子みすゞ、曲:萩京子
金子みすゞは1903年生まれ。1930年に、たくさんの詩を残して26歳で亡くなりました。それらの詩は、長く人々に知られずにいて、(忘れられていて?)20世紀も終わり近くなって、再発見された、という特異な存在です。
1980年代だったと思いますが、金子みすゞの存在が新聞に大きく取り上げられたおかげで、私はみすゞの詩と出会うことができました。そのころはまだ出版物が手に入りにくい時期だったのか、私はノートに詩を書き写していました。
作曲したい。でもできない。何も飾らずにすっと立っているみすゞの詩に作曲できる日は来るのだろか。何年もそんな気持ちでいましたが、ふとそれが実現するときが来ました。詩と出会ってから四半世紀も過ぎていました。
肩のちからを抜いて、詩と向かい合って、ことばと対話するような気持ちで、「ゆめ売り」を作曲しました。「ゆめ売り」のような存在に私もなりたい、と願って作曲しました。
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ゆめ売り
年のはじめに
ゆめ売りは、
よいはつゆめを
売りにくる。
たからの船に
山のよう、
よいはつゆめを
つんでくる。
そしてやさしい
ゆめ売りは、
ゆめの買えない
うら町の、
さびしい子らの
ところへも、
だまってゆめを
おいてゆく。
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明るいほうへ
詩:金子みすゞ、曲:萩京子
「明るいほうへ」。この詩は、明るいところを求めるこころが語られているのに、全体に寂しさを感じます。語り手が陽の届かないところにいる、ということを感じてしまうからでしょうか。でも、「自分の羽が焦げてもよい」という強い思いに触れるとどきりとします。
歌を作曲するとき、前奏を考えるのは楽しいですし、前奏ができたら歌ができた、みたいな時もあります。でも、どうしても前奏をつけることができない詩があります。
この曲も前奏なしです。「明るいほうへ」行こうとする思いをいきなり伝えたかったので。
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明るいほうへ
明るいほうへ
明るいほうへ。
一つの葉でも
陽の洩るとこへ。
やぶかげの草は。
明るいほうへ
明るいほうへ。
はねはこげよと
灯のあるとこへ。
夜とぶ虫は。
明るいほうへ
明るいほうへ。
一分もひろく
日のさすとこへ。
都会に住む子らは。
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