【萩京子・作曲ノート】
雨
詩:鄭義信、曲:萩京子
かつて、横浜の洋光台にある「横浜こども科学館」(現在は「はまぎん こども宇宙科学館」)で、春休みや夏休みに「科学バラエティーショー」なるものをやっていました。
主に当時の劇団黒テントの演出家たちが中心になって台本と演出を担当し、毎回萩が音楽を担当していました。
参加するこどもたちと一緒に歌ったりお芝居をしながら、科学に親しみを持ってもらおう、というのが狙いです。
山元清多さんが担当したときのテーマは「コンピューター」。
朝比奈尚行さんのときは「空気」。
そして鄭義信さんのときは「水」がテーマでした。
水をテーマにして楽しい歌がいくつかできました。
こんにゃく座でよく歌っている「地球は水の惑星」もそうです。
この「雨」は、ちょっと懐かしい感じの曲になりました。
ご推察のとおり、「雨に唄えば」を少しもじっています。
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雨
あまい雨
いのちの雨
うつくしい雨
えにしの雨
おもしろい雨
からい雨
きびしい雨
くるしい雨
けがれた雨
こわい雨
雨 空からの
雨 おくりもの
雨 母の
雨 やさしいことば
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わたしの好きな歌
詩・曲:萩京子
林光さんの70歳をお祝いするコンサートに向けて、作詩作曲しました。
60歳還暦のお祝いには、チェロの曲をプレゼントしました。
「ホーシュ君を待ちながら」というタイトルです。
宮澤賢治の「セロ弾きのゴーシュ」に出てくる(というか、出ては来ないのですが)ホーシュ君というゴーシュの友だち(?)の存在に興味を持ちました。
そして、光さんがいつか書きたいと言っていた「ゴドーを待ちながら」をタイトルに引っかけました。
林光さんはあらゆる楽器に向けて素晴らしい曲をたくさん作曲していますけれど、やはり「ひとりのゴーシュとして」という著作もある光さんにとって、チェロに対しては特別の思い入れがあるのではないかと思います。
宮澤賢治が「セロ弾きのゴーシュ」を書いたこと、そして林光さんが「ひとりのゴーシュ」として生きようとしたこと、そのことを考え続けています。
「わたしの好きな歌」、この詩に書かれている内容は、私が林光さんに対して感じていることそのものです。
出かけて行く先々すべてが「林光の音楽」という場になる。
曲だけではなく、場も創造していく作曲家なのだと思います。
堅苦しい、きまじめすぎる空気は苦手のようでした。
その気がないような態度でそっぽを向いているのに、ひとたび音楽に集中すると目を輝かせて近づいてくるようなこどもたちと、いつでも友だちになっていました。
そんな林光さんを歌で表したいと思って作曲しました。
朝どれソング、来月からは林光ソングです。
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わたしの好きな歌
ここにひとつの歌
わたしの好きな歌
いつもその歌はわたしのそばにあった
ここにひとつの歌
わたしの好きな歌
わたしといっしょにその歌も歳を重ねる
その歌
学校で習った
その歌
劇場で聞いた
わたしはいつも小さな声で歌う
わたしにしか聞こえない声で
うれしいとき
たのしいとき
かなしいとき
くやしいとき
いつもその歌はわたしのそばにあった
わたしといっしょにその歌も歳を重ねる
その歌をつくった人は
とてもたくさんの音楽を知ってる
とてもたくさんのことをおもしろがって
とてもたくさんの場所へ飛んで行き
とてもたくさんの
おとなとこどもとともだち
ここにひとつの歌
わたしの好きな歌
いつもその歌は
わたしの心のかばんのなかに
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