朝どれソング
朝どれソングとは...
ソングを毎月7日に2曲ずつ、二年間かけてお届けします。まずは萩京子作曲のソングを24曲、そして林光作曲のソングを24曲。とれたてのみずみずしい食べ物のように、みなさんのエネルギーの源になることを願って。
今月のソング(2020年3月7日公開)
♪つまさききらきら〈小林ゆず子、泉篤史〉
♪月の船の歌〈彦坂仁美〉
映像:和久井幸一
【萩京子・極私的作品解説】
つまさききらきら
詩:A.A.ミルン、訳:小田島雄志・若子、曲:林光
1991年に作曲された。2月21日、京都で行なわれた「こどもとつくる音楽会」で作曲者と参加したこどもたちとで演奏したのが初演。一ツ橋書房の林光・歌の本1「四季の歌」に収録されている楽譜は、単旋律でシンプルな伴奏がついている。(夏の歌に分類されている。)
20年後の2011年7月29日に、やはりこれも京都で行なわれた音楽教育の会全国大会のとき、歌が2声になり、ピアノに加えてマリンバ入りで演奏されたとのことだということを、音楽評論家の池田逸子さんに教えていただいた。
1回目は単旋律で歌い、間奏が入って2回目は2重唱になる。この2重唱では、後から書かれた下のメロディーはときどきもとのメロディーより高いところを歌う。上の声部と下の声部が交差するのが好きです。
「ぼくは じめんのうえの かげのはっぱから かげのはっぱへ」というところは、リズムがいたずらっぽく絡む。ちょっとむずかしい。「どう?できる?」というような、にやっとした光さんの顔が浮かぶ。
間奏のところ、とても魅力的なメロディーがついている。この間奏のメロディーはどこから降ってきたのだろうと思っていた。マリンバの音のイメージだったということかな?
作詩者のアラン・アレクサンダー・ミルンは「くまのプーさん」の作者である。
訳詩は小田島雄志さんと若子さんご夫妻の共訳。
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つまさききらきら
お日さまが
りんごのはっぱをとおしてひかる
お日さまが
りんごのはっぱのかげをつくる
ぼくは
じめんのうえの
かげのはっぱからかげのはっぱへ
にいさんはっぱからおとうとはっぱへ
ひらあり ひらあり
とんでいく
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月の船の歌
『万葉集』による/詩・曲:林光
1992年。林光さんが、万葉集巻七の
「天の海に雲の波立ち 月の船 星の林に漕ぎ隠る見ゆ」(作者不詳)に作曲したのが2月1日。
詩をリライトしてこの「月の船の歌」を作曲したのが2月13日。
光さんはそのころ、万葉集に凝っていた。
万葉集のことばの海に漕ぎ出し、次々に作曲している。
乗りに乗って作曲していることが感じられる。
この歌はスケールが大きい。
だが大仰ではなく、軽やかさとあたたかみがある。
おとなでもなく、こどもでもなく、なのか。
おとなでもあり、こどもでもあり、なのか。
宇宙とつながっているような感覚になることができる。
万葉の世の人は、私たち現代人よりたくさん月と対話していた。
空を海になぞらえて月と対話してきた人たちの記憶が、この歌から呼び覚まされるような感覚。
前奏が8分の6と8分の9が交互に来るところが、心を落ち着けて、と言っているようだ。
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月の船の歌
天の海は いちめん 雲の波です
月の船が その波の上を走って
星の林の中に漕ぎ入り
見えなくなってしまいました
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