朝どれソング

朝どれソングとは...

ソングを毎月7日に2曲ずつ、二年間かけてお届けします。まずは萩京子作曲のソングを24曲、そして林光作曲のソングを24曲。とれたてのみずみずしい食べ物のように、みなさんのエネルギーの源になることを願って。
今月のソング(2020年4月7日公開)

♪運命のジャズ〈北野雄一郎〉
♪旗はうたう〈岡原真弓〉


映像:和久井幸一

【萩京子・極私的作品解説】

運命のジャズ
詩:佐藤信、曲:林光

1967年、劇団自由劇場「皇帝ジョウンズ」劇中歌。
黒テントでの公演が始まる前の「劇団自由劇場」時代。
そのころの舞台を、私は見たことがない。
タイムマシンがあるなら見てみたい。
佐藤信の定型詩によるソングの数々、林光ソングの原型が次々生み出されている。
シンプルなコードネームによる作曲。
そして後から書かれたピアノ伴奏譜。
ピアノ伴奏で曲の初めにベートーヴェンの5番のはじめを使うようになったのは、軽い遊び心から始まったのだと思う。
コンサートで光さんが即興で弾き、とてもウケた。 私もいつからか真似をするようになった。
一ツ橋書房の楽譜が出たとき、「ジャジャジャジャーン」こそ書かれてなかったが、ラララファ~から書かれていたので、愉快だった。

この曲を小学校の公演のプログラムに入れていたことがある。

 ある日 ある時 ある所
 ドカンと一発 運命さ


この内容、小学生はどう受け止めるだろうか?
小学生は笑いながら、本質的なところは受け止めてくれている、と私は思う。
が、学校現場ではこのブラックユーモアをそのまま放置することは好まれない(と感じた)。

「反対、反対!ドカンと一発 運命さ、なんて反対!」
と言う子どもたち役を登場させ、

「パレスチナの子どもたちの神さまへのてがみ」(作曲:高橋悠治)

に続く、という演出をした。
1980年代のハナシ。

詩を表示

運命のジャズ

犬が西向きゃ しっぽは東
そいつが しっぽの運命さ
運命、運命、運命
よろづは天の おぼしめし
いくらしっぽが ひがんでみても
こいつばかりは しかたがねえさ

蛙のおなかにゃ へそがない
そいつが 蛙の運命さ
運命、運命、運命
よろづは天の おぼしめし
いくら蛙が 嘆いてみても
こいつばかりは しかたがねえさ

三本たりない お猿のあたま
そいつが お猿の運命さ
運命、運命、運命
よろづは天の おぼしめし
いくらお猿が いばってみても
こいつばかりは しかたがねえさ

ある日 ある時 ある所
ドカンと一発 運命さ
運命、運命、運命
よろづは天の おぼしめし
死んだ奴等は おかわいそうに
生きてる俺等は 生きてる俺等はめっけもの



旗はうたう
詩・曲:林光

1987年。
「太陽の旗」はこれの合唱版、と「林光・歌の本Ⅲ ものに寄せる歌」の作曲者自身のメモに書いてある。
だが、私などははじめにこの曲に出会ったときのタイトルが「太陽の旗」だったので、いつまで経っても「旗はうたう」というタイトルに馴染めない。
作曲者は後から「旗はうたう」というタイトルを思いついて、事実上の改題を試みたのではないか、という気がしてならない。
同じタイトルで違う作品、違うタイトルでほとんど同じ作品に、後世の者(!)は悩まされることになる。
ソロで歌うのと合唱で歌うのとで、タイトルを変える必要はないでしょう?同じ曲なんだから。
やはり「太陽の旗」というタイトルの強烈さを、後に嫌ったのではないかしら?

リフレインの

 海で死んだら水ぶくれ
 山で死んだら草ぼうぼう


これは信時潔作曲「海ゆかば」のもじりである。
「海ゆかば」は信時がNHKからの注文で、1937年(昭和12年)に作曲した。

詩は万葉集がもとになっている。大伴家持の作とのこと。

 海行かば 水漬く屍
 山行かば 草生す屍


国民精神総動員強調週間のための曲ということである。
「大本営発表」などのとき、はじめに流れたそうである。
戦中を生きた人たちは、この曲を聞けば、戦時中のことを思い出さずにはいられないだろう。
林光ももちろん、リアルタイムでこの曲を幾度となく聞いてきただろう。
「神である人」のために、海でも山でも喜んで命を投げ出すことを讃えた歌である。

「むかし神だった人~」から始まる歌詩は強烈だ。
林光のカゲキな部分、とんがった部分が一番出ている歌だと思う。

詩を表示

旗はうたう

むかし神だった人の命令で
男たちが戦場へ向かうとき
太陽をえがいた旗をふり
人びとは歌ってた
 海で死んだら水ぶくれ
 山で死んだら草ぼうぼう

むかし神だった人は生きのこり
男たちは帰ってこない
かわりにもどった箱のなかの
石ころが歌ってた
 海で死んだら水ぶくれ
 山で死んだら草ぼうぼう

むかし神だった人の子や孫に
いまもふられる太陽の旗
死んだ男たちの血でえがかれた
旗は歌ってる
 海で死んだら水ぶくれ
 山で死んだら草ぼうぼう


♪ゆめ売り/♪明るいほうへ
2018-07-07


♪あくび/♪電車
2018-08-07


♪わたしのお月さま/♪枯れたオレンジの木のシャンソン
2018-09-07


♪餞/♪朝に晩に読むために
2018-10-07


♪唄/♪電線工夫
2018-11-07


♪うたかたのジャズ/♪青いカナリア
2018-12-07


♪空をかついで/♪小さな草
2019-01-07


♪しあわせはこぶ銀のロバ/♪暗い柳の木立のかげ
2019-02-07


♪ねむり/♪馬
2019-03-07


♪ジャストマイサイズ/♪帽子屋さんの子守歌
2019-04-07


♪水はうたいます/♪ひびかせうた
2019-05-07


♪雨/♪わたしの好きな歌
2019-06-07


♪石ころの歌/♪告別
2019-07-07


♪魚のいない水族館/♪舟のうた
2019-08-07


♪赤い魚と白い魚/♪ちょうちょうさん
2019-09-07


♪花のうた/♪ぼくがつきをみると
2019-10-07


♪わたしのすきなこなひきさん/♪やさしかったひとに
2019-11-07


♪銀河の底で歌われた愛の歌/♪サザンクロスの彼方できこえた父が息子にあたえる歌
2019-12-07


♪グランド電柱/♪だれが鈴をつけにいくのか
2020-01-07


♪舟唄/♪影とまぼろし
2020-02-07


♪つまさききらきら/♪月の船の歌
2020-03-07


♪運命のジャズ/♪旗はうたう
2020-04-07


♪壁のうた/♪行ってしまったあんた
2020-05-07


♪ものがたり/♪夢
2020-06-07



♪パレード/♪すき/♪明日ともなれば
2021-01-07


♪うた/♪しぬまえにおじいさんのいったこと/♪なぞなぞうた
2021-04-07


♪見えない月/♪みえないあみ/♪朝のパン
2021-07-07


♪飛行機よ/♪みみがさわる/♪果てしない波を渡るための歌
2021-10-07

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