◆5 公演報告

約20年振りの再演となりました、オペラ『ふしぎなたまご』とオペラ『おじいちゃんの口笛』。無事、7日間10公演を終えることができました。ご来場いただきましたみなさま、ありがとうございました。


オペラ『ふしぎなたまご』

ぼくはプラハのノヴェー・ムニェスト地区勤務のホジェラ巡査です
いつものように、パトロールにでかけたぼくは 軍人通りへ、さしかかりました
ここまでくれば、受け持ち区域は終わったも同じ
ほっとしながら、通りの東の端にある教会の角まで来ると
そこに大きな卵があったのです



部屋にいたのは、同僚のポウルで 冷えからくる腰の痛みに 苦しんでいた
天からまっすぐに下りてくる痛み 大地と平行に横切る痛み



例のたまごから なんと竜が出てきたんだ
大きさはプードルかせいぜいフォックステリアだが 竜だというのはすぐにわかった
だって どうみても竜だとわかる頭が 七つもあったんだから



「その時協会に届いた一通の電報」
その こどもの竜は 呪いをかけられた人間である
私が直接そのことを伝えよう 三百年後 ウィルソン駅で
魔法使いボスコー



「動物愛護協会の見解」
この竜が魔法にかけられた人間なら つまり人間だ



「孤児院の見解」
魔法で動物に変えられたのなら つまり人間でなく動物だ



「引き取り手があらわれる」
この子に必要なのは 動物か人間かを決めることではなくて
安らかに暮らせる家 優しく撫でてもらうこと



「保健所の役人」
待ちなさい トルチナさん
あんたが連れている この動物だがね もしかして野獣 いや猛獣ではないのかね



「語り手の歌」
彼は家に帰り すっかり打ちのめされて坐っていた
というのは もう彼には一銭のお金もないのだ



「大家」
もしもあんたがこいつを どこか遠くに追っ払わないのなら
あんたにここから出ていってもらう



「アリア」
毬のような七つの頭 すべすべした真っ白いうなじ
ダイヤのように美しい くりくりした十四の目
すこしばかり人とちがっているだけで
なぜ嫌う? なぜ憎む? なぜ?

ぶつかりあって鳴り響く鈴
散歩するアミナの七個の鑑札も
あの人たちの耳には 仲間外しの合図
アミナとわたしがやすらかに暮らす
美しい場所はどこにある?



「銀行の課長」
いますぐにその竜を手放すか
さもなければ今月いっぱいでクビになるか



大丈夫だよ わたしは お前を捨てやしない



わたしがアミナ王女です
今の今まで魔法で 竜に変えられていたのです



あんたがアミナを開放したのだ トルチナ
愛こそが人間や動物を 自分たちの呪いから救うのだ



追伸 愛について
「AI」
二つの母音 AI AI
おまえなしでは生きられない


オペラ『おじいちゃんの口笛』

ある日ぼくはベッラとシーソーをやりながら、
おじいちゃんの家ヘ行ってケーキなんか食べる話をした。



どうしておれ、おじいちゃん、いないんだろ?
ウルフみたいに、おじいちゃんがほしいよ。
─おじいちゃんを手に入れられるとこ知ってるよ、おれ。



あの人だよ、な、ほんとうにおじいちゃんだろ?
─うん。おれ、なんだかドキドキしてきちゃった。



ぼくのおじいちゃんになってください。あの……とつぜんで、すみません。
─というとベッラはわたしの孫というわけだ。



食堂のみなさん、紹介します。この子は孫のベッラです!
わたしの孫です!



凧を作るの? おじいちゃん。

─ヨハンナ 口笛が吹けるかい
岬のハナまで歩いてゆこう



いいな、ベッラ、凧ひもを持って遠くへ行くんだ。



それで凧はあがらなかった?
─風が出なかった、それに凧が少し大きすぎた。
飛べない凧というのは、わたしらしい、いかにも。



この凧、もっと改良して空高く揚げようよ。
おじいちゃんの誕生日のお祝いをしよう。どう思う、ウルフ?
─そうだな、なにかうんとたのしい、面白いパーティをやろう。



おじいちゃん、俺はおじいちゃんみたいに口笛ふけたら、
たのしいだろうと思うよ。



〜おじいちゃんのひげをそってあげる、ベッラとウルフ



お出かけですか?
─きょうはわたしの誕生日ですから……はい。
まあ、知らなかったわ。おめでとう、ニルスさん! たのしんでいらして。
でもあなたたち、くれぐれも注意してよ ニルスさんは心臓がよくないのですから。



もう大丈夫。おじいちゃんさすが! 木のぼりうまい。
─おどろいたもんだ、のぼったよ。
この木の上から降りたくないなあ、まるで天国にいるみたいだ…



おじいちゃんカンパイ!
─なにか立派なことばをいいたいんだが、わたしはヘタクソでね



ニルスのために二人はとてもよいことをしたのよ。
人生には意味がなくても大切なことがあると、
いつかの昼間、原っぱであたしいったよね。



ぼくとウルフ、二人でおじいちゃんにお別れの歌を
うたおうと思うんだけど、いいかな。
これ、おじいちゃんがきっと喜ぶと思うんだ。
二人で考えたんだ、よく眠れるように……。



月の光に 照らされて
花も木の葉も 夢を見てる
夢をみながら 静かに揺れる
眠れ 眠れ こどもたちよ



オペラシアターこんにゃく座公演
林光歌劇場2019 オペラ『ふしぎなたまご』+オペラ『おじいちゃんの口笛』
オペラ『ふしぎなたまご』
原作 カレル・チャペック(林和加子訳による)
台本・作曲 林光
オペラ『おじいちゃんの口笛』
原作 ウルフ・スタルク(訳:菱木晃子 ほるぷ出版刊「おじいちゃんの口笛」より)
台本 広渡常敏
作曲 林光
演出 加藤直
美術 池田ともゆき
衣裳 武田園子
照明 齋藤茂男
振付 白神ももこ
舞台監督 八木清市
舞台監督助手 松村若菜
音楽監督 萩京子
演出助手 小林ゆず子
宣伝美術 小田善久(デザイン)伊波二郎(イラスト)

照明操作 (株)シアタークリエイション 河野真衣、菅野裕子
振付アシスタント 北川結
衣裳製作 飯野知子、藤木智美、堀本さくら
稽古ピアニスト 井口真由子、湯田亜希
演出部 壹岐隆邦、吉田進也、小田藍乃、鈴木あかね
衣裳部 鈴木裕加、荒井美樹、石窪朋、豊島理恵、山本伸子
票券 齊藤路都
制作 田上ナナ子、忠地あずみ、湯本真紀、大原小夜子、土居麦、森友希、高橋志野
協力 (有)ニケステージワークス

◆出演
オペラ『ふしぎなたまご』                                    
高岡由季
高岡由季
ホジェラ巡査 など

飯野薫
飯野薫
アミナ王女 など

西田玲子
西田玲子
大家 など

野うるお
野うるお
トルチナ など

島田大翼
島田大翼
ポウル、保健所の役人、魔法使いボスコー など

沢井栄次
沢井栄次
銀行の課長 など


オペラ『おじいちゃんの口笛』                               
沖まどか
沖まどか
ウルフ

熊谷みさと
熊谷みさと
ベッラ

大石哲史
大石哲史
ニルス

梅村博美
梅村博美
トーラ

白石静香
白石静香
コロス

花島春枝
花島春枝
コロス

泉篤史
泉篤史
コロス

北野雄一郎
北野雄一郎
コロス

五味貴秋
五味貴秋
ピアノ(9/12・14・16・17夜)

入川舜
入川舜
ピアノ(9/13・15・17昼・18)


◆会場
俳優座劇場

◆公演日程
2019年9月12日(木)〜18日(水)

◆助成
文化庁文化芸術振興費補助金(舞台芸術創造活動活性化事業)│独立行政法人日本芸術文化振興会

◆後援
チェコ共和国大使館、スウェーデン大使館

◆主催・制作
オペラシアターこんにゃく座

写真:和久井幸一


林光歌劇場2019 ダイジェスト動画

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