オペラ『あん』公演報告
ダイジェスト映像
どら組ダイジェスト映像
春組ダイジェスト映像
オペラ『あん』ものがたり
桜の季節。
小さなどら焼き屋「どら春」では、雇われ店長の千太郎がどら焼きを作って売っている。
この店に借金があり、仕方なく働いているのだ。
千太郎は人生につまずいた男。
どら焼きも、お客も、自分も愛せない。
毎日いい加減な仕事。味見さえしないどら焼き。
そこに74歳の徳江がやってきて、「ここで働きたい」と言う。
はじめは断るが、徳江が置いていったあんの味に魅了され、雇うことに。
あんが生きている!
あんが歌っている!
徳江とのあん作り。新しく生まれ変わった、どら春のどら焼き!
あー、よしよし。ああ、そう。いい子だね。
応援してるの。この小豆たちを。
せっかく遠くから、このどら焼きになるために来てくれたんだから。
徳江が作るあんが評判となり、店は大繁盛。行列ができる店となった。
ところが、徳江がハンセン病患者だという噂が流れ、次第に客足が止まる。
オーナーの奥さんから、徳江をやめさせるよう言われ、そのことに逆らえず、
世間の偏見から徳江を守ることもできず悩む千太郎。
やっぱり、どら春のおばあさん、ハンセン病らしいよ。
差別しちゃいけないってわかってるけど、気持ちわるいから。
差別しちゃいけないってわかってるけど、気持ちわるいから。
徳江は働く喜びに溢れていたが、自ら店を去ることにした。
徳江は店を辞めたが、客足は戻らない。
荒んだ気持ちの千太郎。
このままでいいのか?
自分は、このままでいいのか?
自分は、このままでいいのか?
千太郎は、徳江が暮らす療養所天生園に、「どら春」の常連の少女ワカナとともに訪れる。
徳江は天生園の製菓部で、友人の森山と共に55年間あんを作り続けて来たのだった。
ありがとうは、私たちの言葉。
あなたたちが喜んでくれたから、甘い物を作ることができた。
私たちもそれで、生きている気がしたの。
あなたたちが喜んでくれたから、甘い物を作ることができた。
私たちもそれで、生きている気がしたの。
母さんが、徹夜で縫ってくれた白いブラウス。
私、それを着て、ふるさととさよならしたの。
一度らい病にかかったら、二度と外には出られない。
もう家族にも会えない。
社会が私を捨てたと。
それからずっと、ここで暮らしてきたのよ。
囲いのなかから、囲いの外を夢見ながら。
私、それを着て、ふるさととさよならしたの。
一度らい病にかかったら、二度と外には出られない。
もう家族にも会えない。
社会が私を捨てたと。
それからずっと、ここで暮らしてきたのよ。
囲いのなかから、囲いの外を夢見ながら。
現実社会で、それぞれに生きづらさを抱え、もがいている千太郎とワカナは、徳江の話を聞き、徳江が苦しみの末に獲得した心の豊かさ、温かさに触れ、心が解放されていく。
生まれ変わろうとしている千太郎。徳江との手紙のやり取り。
私は療養所で、風や木々のざわめきに耳をすませてきました。
風や木々の語る言葉を「聞く」のです。
風や木々の語る言葉を「聞く」のです。
徳江とのやり取りから新しい塩どら焼き作りに励むが、うまくいかない。
そんな中、甥っ子を社長にして鉄板焼き屋に変えるので指導して欲しいという奥さんがやってくる。
申し出を断り、クビになる千太郎。
千太郎の涙が落ちた塩どら焼きいかがですか!
千太郎は、夢の中で白いブラウスの少女と会う。
俺は思いました。
かつて少女だったその人に会いに行かなければいけない。
そして、訊いてみよう。
あなたのふるさと、そこには桜の花びらを塩漬けにする習慣、ありましたか?
かつて少女だったその人に会いに行かなければいけない。
そして、訊いてみよう。
あなたのふるさと、そこには桜の花びらを塩漬けにする習慣、ありましたか?
再び巡って来た桜の季節に、千太郎とワカナは徳江に会いに天生園を訪れる。
ふたりは森山から一通の手紙を渡される。
その手紙は徳江からふたりへの手紙だった。
天生園では、入所者が亡くなると、一本ずつ木を植えて来たという。
トクちゃんの木はそれ。桜が好きだったから、ソメイヨシノにしました。
木々の中を風が流れ、林がざわめく。
桜の木の下で、徳江の言葉を感じる千太郎たち。
徳江がふたりに遺したメッセージ。
誰もがこの世に生きる意味を持っている。
それはまた、別の人の生きる意味に繋がっている、と。
そう、あの日からもいろいろなことがありました。
俺はつまずきそうになる度に、あなたからいただいた手紙を胸にあてます。
俺はつまずきそうになる度に、あなたからいただいた手紙を胸にあてます。
哀しみの雨がやむことはなくても
雨もまた語っている 歌っている
何かを照らすきらめきになる
そっと見つめて受け入れれば
どら焼き、いかがですか!
小豆の声が聞こえる
どら焼き、いかがですか!
写真:前澤秀登
公演データ
オペラシアターこんにゃく座創立50周年記念公演〈第三弾〉オペラ『あん』
原作・台本:ドリアン助川(ポプラ社刊「あん」より)
作曲:寺嶋陸也
演出:上村聡史
美術:乘峯雅寛
衣裳:半田悦子
照明:阪口美和
舞台監督:大垣敏朗
演出助手:谷こころ
音楽監督:萩京子
宣伝美術 信濃八太郎(イラスト)・片山中藏(デザイン)
照明操作:(株)ステージ・ライティング・スタッフ 石坂晶子、川上真希、小嶋愛梨
大道具製作:(株)C-COM
衣裳製作:阿部朱美、下條幸子
美術アシスタント:酒井佳奈
稽古ピアニスト:井口真由子
写真撮影:前澤秀登
記録映像撮影:東京コンサートシステム
録音:(株)フォンテック
演出部:北野雄一郎、沢井栄次、大久保哲
衣裳部:鈴木裕加、入江茉奈
票券:壹岐隆邦
制作:忠地あずみ、湯本真紀、大原小夜子、田上ナナ子、土居麦、高橋志野
協力: ニケステージワークス
◆出演
【どら組】
野うるお | 梅村博美 | 高岡由季 | 豊島理恵 |
---|---|---|---|
千太郎 | 徳江 | ワカナ | 奥さん |
相原智枝 | 西田玲子 | 小林ゆず子 | 金村慎太郎 |
森山 | 美咲 | あかり | どんぐり |
【春組】
島田大翼 | 青木美佐子 | 飯野薫 | 山本伸子 |
---|---|---|---|
千太郎 | 徳江 | ワカナ | 奥さん |
花島春枝 | 沖まどか | 熊谷みさと | 泉篤史 |
森山 | 美咲 | あかり | どんぐり |
橋爪恵一 | 草刈麻紀 | 入川舜 | 五味貴秋 |
---|---|---|---|
クラリネット | ピアノ |
◆会場
俳優座劇場
◆公演日程
公演日程 2022年2月10日(木)〜20日(日)
◆助成
文化庁文化芸術振興費補助金(舞台芸術創造活動活性化事業)│独立行政法人日本芸術文化振興会
公益財団法人三菱UFJ信託芸術文化財団
◆後援
一般社団法人未来の会議
◆主催・制作
オペラシアターこんにゃく座