朝どれソング
朝どれソングとは...
ソングを毎月7日に2曲ずつ、二年間かけてお届けします。まずは萩京子作曲のソングを24曲、そして林光作曲のソングを24曲。とれたてのみずみずしい食べ物のように、みなさんのエネルギーの源になることを願って。
今月のソング(2019年7月7日公開)
♪石ころの歌〈女歌役者〉/♪告別〈富山直人、髙野うるお〉
映像:和久井幸一
萩京子・極私的作品解説
石ころの歌 原詩:ソル・チャン・ス、曲:林光 1978年に作曲され、作曲者自身のうたとピアノで初演されたソング。 季刊誌「アジアの胎動」に掲載された詩の原題は「石ころ」。 当然最初はひとつのメロディーのみで2重唱ではなかった。 8分の6拍子の感じを、私はなぜかフォルクローレの影響だと考えてきた。 こんにゃく座では1980年ころから歌っている。 いつのころからか主に男たちが歌ってきた。 だが、聞くところによるとこの詩は、韓国の〇〇工場の女子工員たちの戦いの詩だという。 では女だけで歌ってみよう、というのがこの「朝どれソング」での挑戦。 「朝どれソング・林光編」の幕開き。 極私的イメージ。 「カルメン」のタバコ工場の女たち。 普段は笑ったり喧嘩したりさざめきあっている。 でも、「やるときはやるわよ」という戦いの姿勢です。 石、といえばフェリーニの「道」。 「こんな小石でも何かの役に立っている」・・・忘れられないセリフ。 それは、どんなものでもそこに存在しているだけで良いということ。 巨大な何かにぶちあたって火花となることは捨て石になることではない。 火花という花になることでしょう。 +詩を表示
告別 原詩:エドウィン・カストロ、詩・曲:林光 1976年に三多摩青年合唱団のために作曲された。 ということは初めから二重唱曲だったということですね。 私がはじめてこの曲の楽譜に接したのは、1978年ころ。 なぜかその楽譜は「告別、ハ調」と書かれていて、メロディーは単旋律、歌詞は書かれていなかった。 もちろん光さんの手書き譜ですが、原調より全音下げた調で誰かがソロで歌う際に、急いで書いたものだったのでしょう、きっと。 二重唱だということも、D:durが原調だということも後から知りました。 今回の演奏はC:dur。ハ長調です。 この歌のシンプルな3拍子のピアノ伴奏はとても難しい。 ギターを爪弾くような感じで、弾き語りをするような感じで弾きたいと思います。 それから歌のメロディーのことばの付け方で難しいところがある。 「苦しみは裏口から出てゆき」の「出~てゆ~き」のところ、みんな苦労する。 2番にいたってはもっと大変。 「銃弾も鞭も牢獄の」の「ろう~ごく~の」で緊張してしまう。 「鉄格子」に至ってホッとする始末。 だがホッとする間もなく、「鉄格子ももうないだろう」の「も」と「も」がつながっているところが難しい。 でも、楽譜通りに歌おうとするから、難しいなどという感情が起きるのであって、聞き覚えて歌う感じで歌えば良いということはわかっています。 誰かがメロディーを崩して歌っているのを書きとめた楽譜、という仕掛けだと思うことにしましょう。 ですからこの歌を歌う人は、あまり律儀に楽譜に正確に歌おうとせず、自由に歌うことをお勧めします。 獄中で息子にあてたことば、という重みを、3拍子に乗せて、長調で繰り広げるところがすごいと思います。 ニカラグアの改革派組織「サンディニスタ」のメンバーのひとり、エドウィン・カストロが獄中で書いたことば、と光さん自身が書いていますが、たしか獄中の壁に書いたことばだったと記憶しています。 スペイン語の雑誌「第三世界」に掲載されたということですが、それをヴァイオリニスト、黒沼ユリ子さんが訳して紹介したのだったと思います。 詩の部分が原詩と書かれた歌には、誕生の秘密が隠されていますね。 作曲者がその言葉と出会ったときの、熱量が感じられます。 2番が終わって半音上の調に転調して、 「息子よ 明日はすべてが 変わっているだろう 苦しみは裏口から出て行き……」 音楽は解決せず、希望とも絶望とも名付けられないような終わりのない曲の終わり方です。 +詩を表示
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♪ゆめ売り/♪明るいほうへ | 2018-07-07 |
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