こんにゃく座と宮澤賢治
◆オペラ『想稿・銀河鉄道の夜』出演者インタビュー その11
2017-01-25
■こんにゃく座賢治オペラについて
―これまでの賢治オペラの出演作は?賢治オペラの中ではどの作品が印象的だった?
富山/そうだな、出演は『フランドン農学校の豚』(生徒役)、オペラ『猫の事務所』(ぜいたく猫役・2001年「うたうおとこたち」)あとは、旅公演の『どんぐりと山猫』(馬車別当役)、昨年9月の『グスコーブドリの伝記』(赤ひげの主人、グララアガア役)。『フランドン農学校の豚』は、入座した翌年で、賢治オペラは、吉川和夫さん作曲の作品が初めてだった。
印象深いのは、『猫の事務所』かな。ほんの少ししか登場していないのだけれど、やっぱり思い入れ強いね。あと、ユーチューブかなんかで見た、大石さん(大石哲史)と恵子さん(元座員・竹田恵子さん)の二人で河原でうたうオペラ『飢餓陣営』。あれはビックリした!強烈だったな。
―賢治オペラって、他のこんにゃく座オペラとの違いはなんだろうね。
富山/なんだろうね、まず原作に忠実だってことがあるよね。あと、聞かせる、見せる感じっていうのがあまりなくて、音楽を、言葉を聞かせるって感じが強いな。なんて言うのか、役者の身の丈っていうか。猫やったり、虫やったりといろいろなものをやるのだけれど極端なキャラクターづけやデフォルメではない気がして、もちろん衣装や装置が必要なんだけれど、衣装を着けなくてもその役者がそこで演じればできるって感じ。
―「ソング」に近い感じなのかね。
富山/そうだね。等身大っていうのかな。難しいんだけどね。なんだろう、賢治の言葉がそうなのかもしれないけど、感情移入させすぎない。ちょっとこんにゃく座のソングもそういうところあるよね。少し距離を置くっていうのを要求されるというか、それが一番しっくりくるっていうのかな。役として作りこまない分、その歌い手のことが良く見えるっていう。
ソングも一緒なんだけど、こんにゃく座のオペラって簡単そうに見えて実際やってみると難しいところがあるでしょ。本人はすごく考えてやっているんだけど、見るとその人そのものがやっているというように見えるっていうのかな。
―その客観性みたいなものが、こんにゃく座のオペラの特徴のひとつだと思うけど、賢治オペラはより客観性が強いのかな。
富山/そう、その客観性というのが一番わかるのが賢治オペラなのかもね。他のいろいろな作品があるんだけれど、こんにゃく座のオペラっていうと、やっぱり宮澤賢治なのかなって思う。
誰かが書いていたんだけれど、宮澤賢治の作品のすごいところは、センチメンタルになりすぎないって。そこもこんにゃく座のスタンスにあっている気がするね。表現する方にもはいりこませすぎないって気がするね。
ただ今回のジョバンニとカムパネルラは、その役にはいりこまないとやれないかもしれないね。でもな、カムパネルラは、生きているようなそうでないような、こっち側とあっち側を行き来しているから、はいりこみすぎてもダメなんだろうけど…。
車掌も、あっち側の人だと思うので、そのあたりをどうだせるかなって思う。
■オペラ『想稿・銀河鉄道の夜』について
富山/青年と少女のシーン、あれは泣けるね、綺麗!なんでだろうって思うんだけど、稽古場で楽士合わせして音楽だけでもう泣けるね。まろ(沢井栄次・青年役)の声も作用しているのかもね。
あと、すごいガラコンサートみたいな(笑)、強力なソリストの共演!みたいだと思ったのは、尼さん役の梅さん(梅村博美)がでてきて、大学士役のうるおさん(野うるお)が出てきて、鳥捕り役の初演は鍋さん(川鍋節雄)だけど、今回の佐藤さん(佐藤敏之)が出てきて、車掌役の俺もちょっとでて(笑)ってところ。ほとんど一人でその場を成立させているでしょ、もう次々とへんな人たちなんだけどね、実力者が出てくるって感じで面白いよね。
北村想さんの台本があるから、これまでの賢治オペラとは少し違うよね。劇的な分、センチメンタルな部分が少し強くなって、でもそれが物語をわかりやすくしているのかもね。
―今回は、なんと!生徒役もやることになったね。演出の大石さんは、実年齢関係なく子ども役をやる男性陣を面白がっているんだと思うけど。
富山/この年になって子ども役をやることになるとは思っていなかったんだけどね。俺も佐藤さんも大石さんにとっては、20年前後ずっと見てきているから、まぁ言ってみれば子どもみたいってことか(笑)。観てる人が面白がってくれるといいんだけれど。
―車掌役はどうですか?
富山/初演の時は衣装から言って異次元の世界という感じだったけど、今回は普通の車掌さんの見た目になって、こっち側の生きている人とあっち側の人の橋渡しのような役目ができるといいなと思う。
―大学士の助手という役もありますね。これは得意分野だよね。
富山/大学士の助手二人でオペラ漫才をやるって台本にあるんだよね。誰がこの役をやるかは決まっていなかったから、もしもこの役をやるとしたらと構想は練っていて、望むところではあった。先日の助手役を決める漫才選手権では4人の相方とそれぞれ組むことになって、この人とやるならこのネタって考えやった。ま、ちょっとした私の趣味の時間(笑)芸人さんみたいにはできないから、考古学の助手という役だからということと、昔の歌やオペラをカバーするっていう感じで、60年ほど前の漫才を勉強したりしてね。お客さんに一切うけなくても、くじけない強いメンタルで挑みますよ!
―作品全体はどうだろうね。
富山/物語の時代でいうと100年ほど前なのかな、でも未来感もあるし、今かもしれないし、いつの時代でもあるかもしれないし。「銀河鉄道」ってものがそもそもシュールだよね。現実を超えてしまう感じ。物語としては、大事な友との別れなのかなと。あと、伝えるってこと、その人の存在はなくなっても伝えられたことはちゃんと残るから。
一番好きなシーンは、やっぱり青年と少女のところ、歌われている言葉を噛みしめながら、聞く、聞きどころだね。この作品は、見どころ聞きどころがたくさんあるよね。そこを楽しんでもらえるといいな。
(聞き手・忠地あずみ/こんにゃく座制作)