こんにゃく座と宮澤賢治
◆オペラ『想稿・銀河鉄道の夜』出演者インタビュー その8
2017-01-04
■こんにゃく座賢治オペラの思い出、好きな作品、やってみたい役など。
―こんにゃく座の賢治オペラで観たことがあるのはどの作品?
小林/最初は、私より先に母がこんにゃく座の賢治オペラに出会っていて、NHKの芸術劇場で放映されたオペラ『セロ弾きのゴーシュ』を見てものすごく印象強かったみたいで、その後におやこ劇場でオペラ『ロはロボットのロ』がくるということで「あ!あのゴーシュの劇団だ!」とむっちゃ楽しみにしていたようなんです。それが、私とこんにゃく座の出会いでもあるのですが…。(オペラ『グスコーブドリの伝記』出演者インタビュー その2より)
私が生の舞台で観たのは再演の再演だったりするのですが、大石さん(大石哲史)とさとみさん(田中さとみ)の荒川区の児童館での『シグナルとシグナレス』、『セロ弾きのゴーシュ』『注文の多い料理店』『よだかの星』の旅公演と、『どんぐりと山猫』は子どんぐりで出演したし(オペラ『グスコーブドリの伝記』出演者インタビュー その2より)、もちろん初演の『想稿・銀河鉄道の夜』も観ました。しかも私、2回も観ました!ダブルキャストの時は2回観ることもあるのですが、そうでなくて観たのは珍しく、すごい素敵で2回観たいなと思って。
―その中で『どんぐりと山猫』は、ワークショップに参加して子どんぐりで出演だったんだよね。他に自分で歌ったりした作品はある?
小林/はい!『どんぐりと山猫』は、岐阜の大垣おやこ劇場にいた時で高校2年生でした。それと、レッスンの発表会でやった『ひのきとひなげし』はあまりに面白かったので、その後自主企画(6名の座内ユニット「おとゆいむし」による2015年7月のコンサート「夏・聞こうぜ 2015 ヨーイ・ドン!」)でもやったので、思い入れがあります。『よだかの星』と『どんぐりと山猫』も友達と2人でライブでやったりしました。
―2人で『どんぐりと山猫』やったんだね!自主ライブの演目に賢治作品を選ぶことが多かったみたいだけど、こんにゃく座も16作品もオペラにしているよね。賢治オペラの楽しさってなんだろうね?
小林/オノマトペとかは、音、音楽そのもので面白いって思うし、『グスコーブドリの伝記』をやって(2016年9月初演・のんのんのん役)前よりもそのことは感じました。こんにゃく座のオペラってコロスがたくさん出てくるじゃないですか。賢治オペラでは、特にその語っていく人が必ずいて、宮澤賢治独特の情景描写などをうたっていくコロスが重要な位置にあって、登場人物だけでなくまわりの人たちが物語を創っていくっていうのが、こんにゃく座のスタイルと合っている気がします。二人でやる時は、登場人物と語りをどうやって二人だけでやっていくかを考えるのが難しかったけれど楽しかったです。
―コロスって立ち位置は、とても難しいよね。やりすぎても、やらなさすぎてもダメだしね。賢治オペラの中では、どの作品をやってみたいですか?
小林/『セロ弾きのゴーシュ』はいつかやれたらいいなぁと思います。まどかさん(沖まどか)とゆうこさん(川中裕子)の二人のライブで全編ではないのですがピアノを弾かせてもらったことがあって、音楽がすごい!と思って。物語自体にも音楽が出てくるんだけれど、それが実際立体的に本物の音楽になって生き生きと立ち上がってくる感じがすごいなぁと思います。
■オペラ『想稿・銀河鉄道の夜』について
小林/小学校の時に読んだり、アニメで見た記憶はあるけれど、よくわからないなぁという印象でしたね。初演の時は、劇場がシアタートラムだったので、客席の入り口への通路がちょうどトンネルみたいで、そこを抜けて行くともう「銀河鉄道」のその世界が広がっていて、びっくりしました。装置の船も素敵だったし、ベンチも今も稽古場にあって、見るとすごくシンプルな作りなのにとっても凝っているように見えたし、照明や映像も良くって、とにかくきれいだなぁって思いました。ずっとこの世界に浸っていたいなぁと思って、2回も観てしまいましたね。
入座前のその頃は、こんにゃく座のいろいろな作品を観ていろいろなオペラがあることを知ったんだけれど、でも賢治オペラを観るとなんだか安心する、こんにゃく座っぽいなぁって思うんですね。 そうそう、初演の時に惹きこまれたのは、梅さん(梅村博美)の尼さんや、うるおさん(野うるお)の大学士や、鍋さん(川鍋節雄)の鳥捕り、あのあたりの3人のキャラクターがあっちこっちの方向にぶっ飛んでいて本当に面白かったです。本で読むと単調なところも、そういう楽しい部分と、ジョバンニとお母さんのシーンみたいな静かな部分と、メリハリが効いていて見やすかったです。
―今回は、生徒役と、素粒子というコロス役もあるよね。あまり歌ったり語ったりしないコロスで、しかも素粒子って一体何?って思うと、ちょっと難しい部分もあるかもね。
小林/そうですね、観てる時は、素粒子ってすごく不思議な存在で、でも違和感がなくって素敵だなと思っていたんですけど、いざ自分がやるとなるとどういう心持ちでやるのか…。風みたいになったり、オブジェのように物体だったり。どうなるんだろうとドキドキしますね。体はしんどいだろうけど多恵さんの振付もすごく楽しみです。
あと、教室のシーンも、先輩たちからも楽しかったと聞いているし、チームワークだと思うのでみんなで作るのが楽しみです。
―今回のオペラ『想稿・銀河鉄道の夜』のどういうところを届けたいって思いますか?
小林/音楽がとっても素敵で、聞きごたえがあると思います。
劇場が広くなっても、初演のシアタートラムの時のお客さんとして観た時に感じたようなひとつの世界観が表現できるといいなぁと思います。あの異空間、異世界を担っていくのが自分もやる素粒子という役だと思うんですけど、歌っている時間よりも動いたり、漂ったりしている時間が多いだろうし、身体表現が勝負でしょうか(笑)広い会場でも、旅公演でのさまざまな会場でも、こんにゃく座の「銀河鉄道の夜」の世界観をきちんと創って、多くの人に楽しんでもらえるように、届けられたらなぁと思います。
(聞き手・忠地あずみ/こんにゃく座制作)