2018年『よだかの星』特集ページ
うたものがたり『よだかの星』出演者インタビュー その1 冬木理紗
2018-02-23
テーマ:「音楽会」
─クラリネットはいつ始めたの。
冬木(以下、冬)/中学校の吹奏楽部で始めました。
─吹奏楽部を始めたのとクラリネットを選んだのはなんで。
冬/入学式で、吹奏楽部が入場の曲とか校歌とか演奏してくれて、それを聞いて吹奏楽部に入りたいと思ったんです。楽器の希望を、第一希望トランペット、第二希望打楽器で出したんですけど、トランペットも打楽器も人気で。残っているのはクラリネットしかないですね、となって(笑)。
─学芸大(東京学芸大学)を受験したのはなんで。
冬/高校が、わりとお勉強お勉強した学校で、部活もコンクールに出るようなこともなくて、好きな時間に来て、好きな時間に帰っていいよ、というような学校だったんです。だから楽器はマイペースにやっていたんですけど、たまたま吹奏楽部に、学芸大の教育学部音楽科を受験する先輩がいて、その人に影響されて、そういう道もあるんだって思って。
─その時は、将来クラリネットで食べていくとかいうことは具体的に思い描いていたの?
冬/思い描いていなかったです。大学で専門的に音楽を勉強できたらもうやめようと思っていました。
─大学を卒業することになって、それで、こんにゃく座に入ろうと思ったんだったっけ。
冬/そうですね。大学に入学してすぐに大石さん(大石哲史)って人に出会ってしまって、入学前に思い描いていたこととは変わってしまって。
─こんにゃく座を知って、そうやって生きていく道もあるな、って。
冬/島田先輩(島田大翼)とか、熊谷先輩(熊谷みさと)とか、学芸大の先輩方もいて…
─また先輩の影響をうけて(笑)?
いま、興味があることということであげてもらった、「音楽会」のことを聞きたいんだけど、どういう会なの?
冬/正式名称は、《チキンポトフ JAMJAMうた遊びの会》といって、これは私がうたうコンサートのような会ではなく、全員でつくる会で、私はどちらかというと進行役っていうか。
─全員? ってどういうこと?
冬/毎回参加者を募って、一緒にうたいませんか、というようなことをやっているんです。
─それは、「やる人」と「お客さん」っていうのは別なの?
冬/いままでに4回やったんですけど、だいたい参加者だけですね。
─? どういうこと? お客さんがいないってこと?
冬/えっと、参加者がお客さんみたいな。
─ワークショップみたいなこと?
冬/そうです。でも、ワークショップと言うと、ちょっと偉そうですよね(笑)。
─どういう人たちが集まってくるの。
冬/いまのところSNSで、こういうことやるのでやりたい人いませんか、っていう感じで募っていて、いままでは知り合いが多いです。
─どういう内容をやっているの。
冬/えっと、二段構成になっていて…
─二部構成。
冬/二部構成(笑)。参加者が自分の好きな曲を演奏する、というミニライブっていうのと、後半が、その日の参加者で、なにかひとつテーマを決めて、歌で遊んでみようっていうのをやっています。いままでやってみて結構楽しかったのは、「即興ブルース」というのです。
─「即興ブルース」。それはどういう。
冬/即興で普段のちょっとした憂鬱な出来事を歌ったり、ボヤいてみたりっていう試みです。最初に、お題、たとえば「雪」とか決めて、「大雪が降って、電車が止まって、すごく憂鬱でした」みたいなことを歌に乗せてやってみるんです。ブルースは十二小節の基本のコードがあるので、一緒に会をやっている、ジャズピアニストの竹田くん(竹田宗一郎さん。冬木の大学の同期)にそれを弾いてもらって、それにのせて、
─それぞれ参加者が自分の言葉でうたう。
冬/そうです。これがなかなかおもしろくって。
これまで二回やって、一回目はいきなりうたってみたんですけど、少しハードルが高かったので、二回目は、「どういう音程で歌っていいのかわからない」っていうことと、「内容(言葉)を考えるのに精一杯になってしまう」っていうふたつのことを解消するにはどうしたらいいかって事前に竹田くんと考えてから、検証してやってみました。
音程のことでいうと、最初にちょっと音遊びというか、竹田くんが伴奏を弾くんですけど、最初からいきなりうたうんじゃなくて、参加者に五つの黒鍵からひとつを選んでもらって、リズムもタイミングも自由に、実際にピアノをたたいて音を入れてみてもらう、っていうのをやってみました。ひとつの音でできたら、音を増やして、その組み合わせもどんどん増やしていく。黒鍵でいい感じにのれるようになってきたら、次はラでもアでもなんでもいいので言葉でやってみる。言葉にすると、黒鍵をたたくのとは違って、五つの音の中から得意な音と、少し居心地が悪くて使いづらい音っていうのが出てくるんですけど、居心地の悪い音をもうちょっと使えるように、わざとその音だけで、やってみたり。そういうふうに徐々に階段をのぼるようにして、最後は即興でうたってみよう、っていうふうにやったりしました。
─そもそもこういった参加型の音楽会をやろうと思ったのはなんでなの。
冬/理由はふたつあって、まわりの音楽をやっていた友達が、大学を卒業したら音楽を辞めちゃう人が結構いて。理由もいろいろで、家庭の事情だったり、仕事をしていると時間がとれないとか、練習しないと人には聞かせられない、って思っていたり。そういう人が、もっと気軽に参加できるようなうたえる会があるといいなって思ったのがひとつと、あとは自分自身が、もともと人前でうたうことにすごいコンプレックスを持っていて、たぶんそれは、うまくやろうとか、上手にうたおうという気持ちがあるからだと思うんですけど、自分の歌も自己反省しちゃうところがあるんです。そういったコンプレックスや不自由さを解消したいというか、何か探っていけないかと思って。
─冬木にとっても「音楽会」は必要な場っていう感じなんだね。
ところで、そもそも進行役とかは、ちゃんとやれるの?
冬/うーん…(爆笑)。これから勉強していきます。
あとはなんでしょう、これは大学で音楽教育を勉強したからかもしれないですけど、小学校の時の音楽の授業がすっごく楽しくなかったんです。あれはなんで楽しくなかったんだろうっていうのを大学の時にずっと考えていて。もっと気軽に音楽を楽しめる方法ってないのかな、っていうのをみつけてみたい、という気持ちもあります。
─初めて会う人に人見知りしたりしないの。
冬/しますね。でも、中学校から音楽をやってきて、音楽で繋がれた人って結構多くって。そうやって、人と人が繋がるためのツールとして音楽があってもいいのかな、って感じています。
「音楽会」の内容は、計画をたてて、こういうことができるようになったらいいなっていうことをみっつくらい考えるんですけど、でも実際当日になってみると考えたようにはいかない。その中でどこまで楽しめるかみたいなことを自分でも追及できたらいいなって。
─考えた計画をすべてやり遂げることが目的ではないからね。
冬/ないですね。完成度でもないですし。
─会への参加条件や開催頻度は?
冬/とくに、条件はありません。歌がうたいたいっていう人ならば。
もともと月一回やれたらいいかなと思っていたんですけど。実際やってみたら月一回はなかなか大変で、いまは不定期でやっています。時間は三時間くらいで、参加料は2,000~2,500円くらいです。終わった後には、みんなで食べたり飲んだりのミニパーティーもしています。次回開催はまだ未定ですが、興味がある方は、ぜひご連絡ください。
連絡先メール:chicken.pot.au.feu@gmail.com
(聞き手・田上ナナ子/こんにゃく座制作)