タングな座談会~B組編
2017-03-27


『タング』出演者たちによる座談会。
ダブルキャストのA組につづき、今回はB組の4人(少年役・金村慎太郎、タング役・沢井栄次、クミン役・飯野薫、ナツメグ役・鈴木あかね)に、稽古の内容や作品について尋ねました。

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―稽古にはどのように取り組んでいるの?A組のみんなは、歌う前にお芝居で進行していく今回の稽古に面白みを感じている人も多かったけど。

金村慎太郎/2010年入座、埼玉県出身。オペラ『タング-まほうをかけられた舌-』では、カレー屋を継いだ味のわからない少年を演じる。(写真は2012年、オペラ『森は生きている』より、四月の精役)
金村/歌いながら場面を作っていく時は、音楽の間(ま)に演技をあてはめていく感覚も同時に持っていなければならないんだけど、まずお芝居としてやってみた後に、音楽を乗せていくほうが、音楽を自由に使えるんじゃないかなという感覚があった。

―けれどそうすると、音楽に乗せて演じることになった時点で、一度固めたことがまた一からやり直し、ということにはならないの?

飯野/それはそれで楽しい!

沢井/がらっと変わってしまうこともあるけど、けっして無駄にはならない。根っこはあるから。でも僕は音からインスピレーションを受けて芝居を組み立てていくタイプだから、音がないと、新鮮だけどやりにくさも感じる。

鈴木/お芝居をする人にとっては、台詞で役作りをすることは普通なんだろうけど、音からイメージをもらう人にとっては大変かもしれないね。

沢井栄次/2008年入座、富山県出身。オペラ『タング-まほうをかけられた舌-』では、味の妖精タングと、謎の男を演じる。(写真は2011年、オペラ『ねこのくにのおきゃくさま』より、案内人役)
沢井/そう。頭にも言葉が入ってきにくくて覚えるのに苦労する。歌になっているとすっと入ってくるし、ここは音楽、ここは台詞と区切られているほうが頭の整理ができる。

―それはみんなそうなの?沢井くんだけ?

沢井/僕はちょっと特殊かなあ。萩さん(萩京子)の曲でも誰の曲でもそうだけど、和音がどうなっているのか、テンポがどうなっているのか、そこに作曲家が込めたイメージがあるから、そのイメージに対して僕はこうしたらいいんだなと考えていく。役のキャラクターも音から作っている。

鈴木/そこにひとつ作曲家の演出が入っているから、台本だけから役作りをするより具体的なところに結びついていく感覚は私も同じだな。

沢井/いま台詞だけで稽古をやっていると、お芝居作りに対するアプローチが自分のやり方と違って、あらためて自分は役者じゃないんだなあと再認識している。

鈴木あかね/2013年入座、茨城県出身。オペラ『タング-まほうをかけられた舌-』では、カレー屋を訪れる客、味覚の鋭いチンピラ、カレーに目のない作曲家などを演じる。(写真は2015年、歌芝居『魔法の笛』より、タミーノ役)
鈴木/そうそう、私も「歌役者」を名乗るのに実はちょっと恥ずかしさもあって・・・。たぶんストレートプレイの役者さんとは、お芝居に対する考え方とか役に入っていく感じが全く違うんじゃないかという感覚がある。

―じゃあ二人は「歌手」って名乗るほうがしっくりくるの?

沢井/「歌い手」っていうことが多いかな。自己紹介の時は「テノールの・・・」ともよく言っている。

飯野/私は逆に「歌手」とか「歌い手」って自身のことを言いにくい。コンサートの稽古の時などは、歌い手の中に「すみません、私も混じっていますよ」っていう感じを持ってしまう。

鈴木/みんなそれぞれのスタンスがあるんだよね。(笑)

―さて、ちょっと話題を変えて・・・。薫ちゃんとあかねさんは「コロス」っていう役名がついているけど、コロスの二人って『タング』ではどういう存在なの?

鈴木/お話を展開させていく役どころ。全体の枠組み的な存在でもあるから、その居ざまがとっても難しい。お客さんに、私たちがこういう二人組なんだと最初にきちんと伝わるかどうかで、その後のお話全体の骨子に関わってくるから、演出の大石さん(大石哲史)もかなり丁寧に繰り返して稽古しているよ。私たちも、ああでもないこうでもないと試行錯誤を繰り返しながら、こういう方向がいいんじゃないかなということを探っている状態。

飯野薫/2012年入座、東京都府出身。オペラ『タング-まほうをかけられた舌-』では、カレー屋を訪れる客、シミの成分がわかるクリーニング屋、カレー好きな泥棒などを演じる。(写真は2015年、オペラ『ロはロボットのロ』より、ココ役)
飯野/同じ場面の稽古を繰り返しながら、あかねさんを面白くするのは私だし、私が何か言ったことを受けるのはあかねさんだし、という二人の関係性を考えていると、自分が何かをするというんじゃなくて、お互いに魅力を引きだし合うために私は何をすれば良いのだろうという思考になってきている。それはコロスだけの関係ではなくて、たとえば「少年」の抱えている「暗さ」を引きだすのは、私たちコロスの「明るさ」が逆に必要なんじゃないかなとか・・・。自分の感情だけではなくて、この4人みんなで引きだし合わなければいけないと感じているけど、なかなかうまくいかないから、すごく大変です。

鈴木/まだまだあまり固めずに関係を構築していって、また一度崩してみての繰り返しも必要だよね。

―出演者は4人と少ないからこそ、役作りの重心が、自分じゃなくて、相手と自分とのあいだにあるという感覚を持っているのかなと薫ちゃんの意見を聞いて思ったんだけど。

沢井/人数が少ない作品は、本当にそうかもしれない。

鈴木/『ピノッキオ』に出演した時も4人だったけど、わぁ大変!と思った。ひとりひとりにお客さんの視線が集まるプレッシャーもあったから、4人で協力し合ってお客さんに向き合っていく意識を強く持っていた。

―うたのステージの稽古ではどういったことに取り組んでいるの?

鈴木/いまはハーモニーを作ることが大変な「こんなにたしかに」と「飛行機よ」、そして太鼓の合わせが難しい「My Favorite Tom-Tom」(以下「トム・トム」)に集中して進めている。

―ハーモニーの感じはA組とB組で違う?

沢井/全然違う!A組は声が個性的。

飯野/イメージとしては、太陽みたい!

鈴木/えっ、じゃあB組は暗い?

飯野/違う、違う(笑)。けれどA組は内側から出るパッションをすごく感じる。

沢井/B組はまとまっているけど、そつがない感じもあるかもしれない。こぢんまりと見えてしまわないように気をつけなければいけないなという意識を持っている。同じプログラムでも、うたのステージのカラーは全くといっていいほど違うものに見えると思うよ。だからA組、B組両方観に来るお客さんはびっくりするんじゃないかな。

金村/トム・トムは動きながらリズムを正確に打つのが大変!

飯野/今はできないけど、でも楽しい。「やったるぜい!」と気合いを入れて向き合っている。

―二人はトム・トムは初めてになるんだね?

金村/別の人がやっているのを見たことはあったけど、見ていても難しいことをしてるなあ、って。まさか自分がやることになるとは・・・。

飯野/稽古は次に次にと進んでいくので、アワアワしてます。

沢井/太鼓をたたくリズムも覚えないといけないし、うたも覚えるし、動きもそうだし。3本のラインが同時に進行していくのをみんなで合わせていくことを身体に染みつかせていくことは難しいよ。

―「まほうをかけられた舌」のお話にはどういう印象を持った?

沢井/子供たちにどう見えるだろうかねえ?

金村/子供たちは言葉に反応するんじゃないかなあ?「シナモン」って何だろう?とか・・・。

沢井/そうだね。レストランで出てくるカレーにそうしたスパイスがいっぱい入っていることとか知らない子も多いだろうから興味が湧くかもね。
お話の最後に少年が自分で自分の進む道を決めていくシーンがあるけど、自分で決めることで自分の将来を切り拓いていっている。今の時代はネットで調べればすぐに何でも分かるし、昔みたいに辞書を繰ったり、自分で追究していく意識が今の子たちには減っていると思う。能動的に自分で何かを選択し、そこに向かって突き進んでいくことが大切だよということもメッセージとしてあるんじゃないかな。

―最後にずばりB組のセールスポイントは?

金村/ハーモニー! ハーモニーを保ちつつ・・・、ユーモアもあり・・・、それから・・・、

鈴木/歯が浮いてるよ!(笑)

飯野/なんか未知数なところ。A組は向かおうとしているところが既に見えてきているけど、こっちはまだいろんな方向に可能性を求めている。

沢井/現時点ではまったく見えないね。

鈴木/全然、見えない!

飯野/だからこそ、お客さんに驚いてもらえることをする!

鈴木/おっと~、ハードル上げたよー(笑)

金村/ありがとうございます!(拍手)

鈴木/稽古では試行錯誤してるし、これからも大変な作業だと思うけど、初日の4月13日には、これがB組!っていえるものをバーンと出したいな。そこに向かって、個人個人のアイデアのパズルを組み合わせていって頑張る。それが4人でやる醍醐味でもあると思う。

飯野/A組のカラー、B組のカラーということにこだわらず、『タング』をどう作るかということに集中する。『タング』はありきたりなお話じゃなくて、「魔法」とか「料理」とかわくわくすることがいっぱい詰まっているお話だから、とにかく観に来てくれたお客さんを驚かせるオペラにしたい!


(2017年2月25日)
聞き手・土居麦/こんにゃく座制作