2018年『よだかの星』特集ページ
うたものがたり『よだかの星』出演者“おおいに脱線”インタビュー その3 熊谷みさと
2018-02-27
テーマ:「カエル」
─カエルはいつから好きなの?
熊谷(以下、熊)/それがよくわからないんだけど、たぶん、わたし、緑色のものが好きだってことと関係があると思うんですね。
─緑色が好きなのは、子供の頃から?
熊/わたしは昔から“ちゃみ”って呼ばれていて、小さいころにテレビで〈チャーミーグリーン〉ていう洗剤のCMを見たいとこに「チャーミーグリーン」って呼ばれたからか、「わたしの色は緑なんだ」っていう風に思うようになって、好きな色とか聞かれたときに、緑って言っていた。小さい頃はやんちゃで、おてんばで、活発な子供だったから、よく虫とかも触るし、カエルとかも、いたらつかむし、という感じで。都会(東京都新宿区生まれ)にいるカエルだから、茶色っぽい大きいやつなんですけど、それをつかんで遊んでいたら、よく遊んでいたおにいちゃんに「女子高生になってもそれをつかめたら、ラーメンおごってやるよ」みたいなこと言われて、その時は女子高生はぜんぜんイメージできなかったけど、実際女子高生になったら普通につかめるから、私ぜんぜん大丈夫なおとなになったんだなっていうカエルの記憶(笑)。
─そんなにたくさんは身のまわりに虫とかいなかったでしょ。
熊/それがそうでもなくって、おたまじゃくしは春になるとすごく出てきた。ちょっとした公園に池みたいなのがあって、そういうところには、ザリガニとかおたまじゃくしがいっぱいいて、そういう季節になると、それを集めて(笑)、学校に持って行って、教室で育てたりしていたから、そういう生き物は、身近な存在だったんです。でも、小さいアマガエルみたいなやつはあんまりいなくて、そういうカエルに初めてたくさん会ったのは、こんにゃく座に入ってから地方に行ったとき。自動販売機にばーってカエルがはりついていて、わー! こんなにいるんだ、って驚いて。
─子供の頃活発だったってことは、女の子とよりも男の子とばかり遊んでいたタイプ?
熊/男の子と遊ぶことが多かったです。サッカーとか、どろけいとか。
─一番好きなカエルがなんて名前だったっけ。
熊/トラアシネコメアマガエルです。足がトラの模様で、目は猫目のあまがえるで、かっこいいいんですよ。
─それは実際に見たことあるの?
熊/見たことないんです。アマゾンあたりにいるやつなので。
ほかにも、グラスフロッグていう、体が透明のやつとか、興味深いのがいろいろいて。形が一番かっこいいと思うのは、コバルトヤドクガエルです。
─ドクってことは、毒を持っている?
熊/そう。吹き矢の先にこの毒をつけたりしてたから、ヤドクガエル。キイロヤドクガエルが生物最強の毒を持っていて、さわるだけで死んじゃうらしいんだけど、でもそのカエルを食べちゃう蛇とかがいて、あれ? って(笑)。食物連鎖って本当にすごいです。 なんだか私は手汗がすごいということもあって、なんか親近感も湧いたりとか。
─なんで?!
熊/自分が、両生類っぽいっていうか。
─常に、うるうるしている。
熊/そう、うるうるしている(笑)。
カエルグッズも家にいっぱいあるんですけどそのきっかけは、大学の時に、管弦楽団に入っていて、その中で、木管五重奏のチームを組んでいたんですね。その仲間は、謎のプレゼント交換をするわいわいとしたチームで、木五メンバーとマネージャーっていう六人の女子でやっていたんですけど、クリスマスとか、パーティーってなると毎回何か事前にくじ引きでテーマを決めて、プレゼント交換してたんです。くじ引きの紙に、たとえば「つるつるしたもの」とかいうお題が書いてあって。それである時に、色の指定があるときがあって、その時にわたしがもらったのが、「痩せガエルボディビル」っていう謎のカエルの置物だったんです。全身緑色なのに首に紫のマフラーをしてるってだけで「紫色のもの」のお題で買ってこられたやつで(笑)。それでその時に、なぜか「ちゃみはカエルを集めているからちょうどよかったね」とか言われて、実際その時は集めていなかったんだけど、勝手に設定を作って、ノリで盛り上がるみたいな(笑)。「わたし集めてないけど、でも集めていたような気もしてきた」みたいな感じになって、それで結局そこが始まりで、オーケストラの中で「ちゃみはカエルが好きでカエルを集めている」みたいな設定が広まり、どんどんカエルグッズが集まってくるようになって、わたしも好きは好きだったから、なるほどなと思いながら、グッズが増えていったわけです。
─かわいいものっていうよりも、確か、リアルなものが好きなんだよね。
熊/そうですね。キャラクターのものも好きではあるんですけど、リアルなもののほうが好きです。でも、カエルを飼おうとは思わないんです。それはかわいそうって思っちゃう。触るのとかもぜんぜんできるけど、でもあんまりそうしないほうがいいのかな、って思う。
図鑑とか見てると、進化の過程をたどったり、背中でこども育てるっていうのがいたりとか、こんなふうになるんだと思って、感心するんですよね。
─なるほどね。彼らのためにね。
グッズは、先日、高良さん(楽士の高良久美子さん)からも、もらったんだよね。
熊/そうなんです。こんにゃく座では、はなさん(花島春枝)とかのぶさん(山本伸子)も好きらしくて、箱にたくさんカエルグッズを高良さんが持ってきてくれたときに、山分けさせてもらいました。カエル型のろうそくとかせっけんとかあって。そのせっけんをいま使っているんですけど、溶けてどんどん形がかわっていってしまって。
─そういうのはいとわずに、使っちゃえるんだね(笑)。
熊/使っちゃう(笑)。使わないとかわいそうだと思って。ゆずこ(小林ゆず子)がまだ入座する前に、バレンタインかなんかに、リアルなカエル型のチョコレートをくれたんですね。どうしても食べられなくて飾っておいたら、チョコレートだから白くなってしまって、二度と食べられない状態になってしまって、すごい反省したんですよ。せっかく食べられるために作られたのに、ごめん! と思って。それ以来、使うべきものは使おう! と思って。
─グッズはお家にだいぶ集まった?
熊/集まってますね。実家に置いてきているものもあるんです。いま出窓で、トマトとかオリーブとか育てているんですけど、そのわきにわちゃーって(笑)。
─実際色としても緑が好きなんだよね。
熊/そうですね。何か買うときは緑色のものを買うことが多いですね。そういえば何年か前に、森組のメンバー紹介を座日記に書くときに、“緑色にたとえると”っていうマニアックな形で書いたことがあります。誰誰はアップルグリーン、とか。
─ああ、あったね。そうか、あれはちゃみが緑好きだからだったんだね。
小さいころの、虫だのなんだのとの出会いからカエル好きになって。
熊/そうですね。おたまじゃくしとかたまごとかがいられる環境がまわりにあったっていうのが大きかったのかもしれないですね。
あとは、母がそういうのにわりと寛容というか、積極的というか、おたまじゃくしをたくさん連れて帰っても「じゃ、一緒にたらいにあけようか」って言ってくれたり、木登りとかしていても、あぶないって言って止めるとかじゃなくって、「もっとこっちの枝のほうが…」、みたいな感じだったから、だから野性的にのびのびと育ったのかなって思います。
─カエル好きで得したこととかある?
熊/得したこと。わたしがカエル好きっていうイメージがあまりにもつきすぎているから、旅先とかお店でカエルのグッズを見ると、ちゃみにプレゼントしなくちゃいけない気になるって、わりとたくさんの人に言われて(笑)。ぜんぜん誕生日とかじゃないのに、急にプレゼントしてもらったりする。
─思う思う。ちゃみのカエルと、裕加(鈴木裕加)の象は、かわいいモノを見かけるとつい気になるの。
集まってくるんだね。ほどよいよね、犬とか猫とかだと山ほどあるけど、カエルだとね。
熊/新宿で育ったとは思えないくらい、裸足でかけまわってがけ登りとかしていたし、おてんばとか怪力とか散々言われていたけど(笑)、そのおかげで、いまけっこう体が動かしやすいと思っているから、こんな丈夫に育ててくれて、感謝していますね。
普通のオペラ歌手だったらあんまり役立たないことなのかもしれないけど、こんにゃく座はすごく動くから、よかったなぁと思って。
(聞き手・田上ナナ子/こんにゃく座制作)