旅公演レパートリー
オペラ『さよなら、ドン・キホーテ!』
スタッフ
台本・演出:鄭義信
作曲・音楽監督:萩京子
美術:池田ともゆき
衣装:宮本宣子
照明:増田隆芳
振付:伊藤多恵
擬闘:栗原直樹
音響:藤田赤目
舞台監督:藤本典江
ものがたり
フランスの片田舎に住む、男になりたい少女ベルは学校へ行かない。絵本の中のドン・キホーテを正義のために戦う真の騎士と信じ、老馬ロシナンテと遍歴の旅に出ようとしたり、逃げてきたユダヤ人の少女サラをドルシネア姫としてかくまったりする。
ベルを受け入れ見守る片親のトーマス。足が不自由なゆえ負い目を感じる馬丁のルイ。トラウマをかかえる教師のオードリー。馬も戦争のために売られていく。
それぞれの苦しみと、それぞれの正義。その先に待ち受けているものは――
戦争は終わっていない! 騙されるな! 戦いはまだまだ続く。僕が僕である為に!
鄭義信による人間の本質に迫る台本。萩京子の変幻自在の作曲による他に類を見ない舞台。
作曲家より
今この時代に伝えたいこと
鄭+萩コンビの作品はつねに涙と笑いに満ち、見終わると元気が出るオペラと言われてきましたが、今回は底抜けに楽しいオペラ、というわけにはいかなくなりました。このような時代にこそ伝えなくてはならないことをオペラで伝えたい。台本+演出の鄭義信さんも作曲家である私も同じ思いです。
このような暗い、苦しい時代は、突然やってきたわけではなく、徐々にその足音は聞こえていました。貧困、差別、偏見……そして戦争が足音を立てて近づいてきています。今まさに、さまざまな暴力にさらされている人々に思いを馳せること。わたしたちにできることはわずかですが、それでもオペラで何が伝えられるか? と考えました。
オペラ『さよなら、ドン・キホーテ!』では2匹の馬が人間を批評します。そこからにじみ出る苦い笑いがあります。1940年代のフランスの田舎を舞台としていますが、この作品のテーマは? と問われれば「今この時代そのもの」と答えるしかありません。
戦争、家族、LGBTQ、愛、友情、宗教、抵抗、差別、孤独、死、教育、性暴力……。登場人物が背負ってしまっているそれらひとつひとつの苦しみは、簡単には解放されることはありません。他者はそれを簡単には共有することはできないけれど、思いを馳せることはできるはず。
深い怒り。長く続く怒り。幼い涙が乾き、そこに消えない灯のように燃え続ける怒り。
そしてどんなに苦しくても生きて行くこと。
わたしたちはこの時代のあふれるほどの理不尽に口を閉ざすことはできません。
これは暗く苦い祝祭オペラです。(萩 京子)
公演評
痛みと苦闘描く群像劇の迫力
登場人物それぞれの痛みと苦闘がベルとロシナンテを軸に、群像劇としてリアルに描かれていく。起伏豊かな物語展開のなかで特に印象に残るのは、サラが〈シェマー、イスラエル…〉と祈る場面。同じ人間なのに、なぜ仕事を奪われ、罪もないのに殺されなければならないのかと問いかける歌の、余情豊かな響きがいつまでも耳に残る。こんにゃく座50年の歩みが凝縮された作品となった。
(うたごえ新聞/小村公次)
多様な示唆を内包した作品
機関銃のように放たれる鄭の台詞は時代を超え、人間の根源に潜む闘争心や差別意識の虚しさをえぐり出す。LGBTQや社会の分断などコロナ禍長期化の世界が抱える今日の問題まで観客の意識をしっかりと運び、サティ風ともいえる萩の淡く繊細な音楽が、言葉を感情の海の中に溶かしていく。多様な示唆を内包した作品である。
(音楽の友/池田卓夫)
アンケート
・今にも通じる差別や問題点がこれでもか! と詰まったすごい作品。情報量も感情もあふれ出て、改めて人は一人では生きられないのだと感じました。言葉が追いつきませんが、とにかくすごい作品を観た……と思いました。たくさんの人に見てもらいたいです!
・楽しい舞台でした。コミカルな動き、演出の中にも訴えかけるものが。体当たりの演技、歌、心に刺さってきますね。技術の高さに感動して聴かせていただきました。
・様々なマイノリティがある。戦争下というだけでない、現代にも通じること。しかしそのことを踏み越えて前へ進もう! ドン・キホーテは言っている。
公演データ
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公演日程
2022年12月
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上演時間
2時間30分〈予定〉(休憩10分を含む)
仕込6時間・バラシ1.5時間
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会場条件
間口13.5m 奥行き10.8m
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人数
19人(歌役者8人+楽士1人+スタッフ10人)
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移動方法
電車移動・運搬トラック4t車2台
公演についてはこんにゃく座までお問い合わせください
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