オペラ『末摘花』公演報告
イラスト:村田静穂
オペラ『末摘花』公演は全10ステージ無事終了しました。
ご来場いただいた皆さま、ありがとうございました!
・ダイジェスト映像
紫組ダイジェスト映像
光組ダイジェスト映像
・オペラ『末摘花』ものがたり
時は平安時代。ところは京。
父、常陸宮(ひたちのみや)を亡くした姫は後ろ盾を失い生活は困窮し、姫と姫に仕える5人の女房が暮らすこの屋敷は、見るも無残に荒れ果てていた。
かつて、ふとしたことで常陸宮の姫の存在を知った光源氏は、心を寄せ、契りを結ぶ。
だが今は、源氏は失脚し須磨へ退去し、2年が経とうとしていた。
この屋敷の主である姫は、源氏の再訪を信じ、待ち続けている。
イラスト:高岡由季
【冬】
雪晴れの朝、若い女房の右近と左近は、古く傷んだ屋敷、質素な食事、姫の気の利かなさなど、今の奉公への不満を述べ合っている。
この屋敷を取り仕切る中年の女房・宰相(さいしょう)もまた、今の待遇に不満を持っていた。
頑なに古いしきたりを守って暮らす姫の唯一の理解者は、姫の乳母でもある老年の少将(しょうしょう)だった。少将は姫のもとに源氏が再び訪れ、姫が幸せになり、この家が持ち直すことを夢見ている。
少将の娘、侍従(じじゅう)は、この常陸宮の屋敷と、姫の叔母の嫁ぎ先である受領(ずりょう)の家に、掛け持ちで仕えていた。
侍従は、受領の家の羽振りの良さを母である少将に説き、いつ来るかわからない源氏を待つよりも、叔母を頼るべきだと主張する。
めいめいの思惑が交錯するなか、姫は愚直に源氏の愛情を信じ、待ち続けるのだった。
【秋】
姫の母の妹である叔母は受領に嫁ぎ、宮家と比べると身分は格下だが裕福な身の上となっている。
その叔母が訪ねてきて、この家や調度品を売り払い、姫に自分の家に来て娘たちの教育係になるよう勧める。
しかし姫は、父から受け継いだものは何一つ手放さないと頑なに拒否する。
姫の心頼りは源氏の君。源氏など当てにならないという叔母の説得にも、源氏を想う心だけは誰にも負けない、と姫は信念を曲げない。
叔母は、では侍従をもらう、と言い出す。受領である夫の甥に嫁がせる算段もしている。
侍従の思い通りにさせると答える姫と少将。
そこへ、源氏が名誉を回復し、権大納言に任命され都に戻る、という知らせが届き、一同喜びに包まれる。
【春】
源氏が都に戻ってから半年の月日が経った。
源氏の君は一向に屋敷を訪れる気配もないが、姫は信じ待ち続けている。
叔母がやって来て、夫が出世して筑紫に赴任することになったので、侍従も甥と結婚させて連れて行きたいと言う。
姫にも、現実をよく考えて源氏のことは諦め、一緒に筑紫に来るよう説得するが、姫は承知しないため、侍従だけが叔母に着いて筑紫に行くことになった。
姫は乳姉妹でもあった侍従との別れを惜しんで、自分の髪の毛で拵えたかもじを餞として贈るのだった。
少将は、娘である侍従が自分を捨てて出立することに腹を立てている。
侍従は、すぐに母を呼び寄せるつもりだと釈明するが、少将の押さえていた怒りが噴き出し、この屋敷で朽ち果てる、と叫び出す。
騒ぎを聞きつけた宰相がやってきて、姫が侍従に渡した餞に目をやる。
その何たるかを見た宰相は、ついに姫に――この屋敷に愛想を尽かし逆上する。
少将はひとり残されることを恐れ、出て行こうとする宰相を必死に引き止めようとするのだったが、宰相も不満と怒りを爆発させ、少将を振り払い出て行ってしまった。
泣き崩れる少将のそばに姫が近寄る。
ふたりっきりになった姫と少将。
と、そこへ侍従が慌てて駆け込んでくる。
侍従がもたらした報せ――それは、姫が待ちに待ったものであった。
写真:前澤秀登
・公演データ
オペラシアターこんにゃく座公演
オペラ『末摘花』
原作:榊原政常「しんしゃく源氏物語」
作曲:寺嶋陸也
演出:大石哲史
美術:杉山至
衣裳:宮本宣子
照明:成瀬一裕
振付:向雲太郎
舞台監督:八木清市
音楽監督:萩京子
照明操作:あかり組 曽根篤志、奥出利重子
大道具製作:(株)俳優座劇場・舞台美術部
小道具:高津装飾美術株式会社
衣裳製作:宮本宣子ワークショップ、松竹衣裳株式会社 中司映利子
舞台監督助手:石橋侑紀
稽古ピアニスト:入川舜、五味貴秋
演出助手:青木美佐子
演出部:北野雄一郎、泉篤史
衣裳部:熊谷みさと、鈴木あかね
照明部:佐藤敏之、入江茉奈
票券:壹岐隆邦
制作:森友希、忠地あずみ、湯本真紀、大原小夜子、田上ナナ子、土居麦、高橋志野
宣伝美術:小田善久(デザイン)
写真撮影:前澤秀登
記録映像撮影:和久井幸一、高良真剣、新藤早代
協力: ニケステージワークス、吉澤あずさ
◆出演
【紫組】
【光組】
ピアノ/寺嶋陸也
◆会場
俳優座劇場
◆公演日程
2020年9月8日(火)~13日(日)
◆助成
文化庁文化芸術振興費補助金(舞台芸術創造活動活性化事業)│独立行政法人日本芸術文化振興会
◆主催・制作
オペラシアターこんにゃく座