◆うたものがたり『よだかの星』出演者インタビュー その5 富山直人2018-03-03
オペラシアターこんにゃく座 歌役者
富山直人(とみやま・なおと)
1998年入座。大阪市港区出身、黒テント俳優基礎学校卒業。
テーマ:「ラジオ」
─ラジオ、聴いているんだね。
富山(以下、富)/そうそうたまたま聴いたのがおもしろくて、ずっと聴いているね。ほぼTBS。2012年からだから、震災の後くらいからやね。東京に出てきてすぐは文化放送とかも聴いていた。FMはあんまり聴かないかな。
─私も中学生になるまで家にテレビが無くって、そのころはずっとラジオ。それもTBS一家だったの。いま、TBSってどんな感じの番組をやっているの。
富/僕が聴いているのは、朝、伊集院光やろ、そのあとジェーン・スーっていう人のがあって、そのあと「たまむすび」っていう番組があって、そのあと荒川強啓さんがニュースやって、FROGMAN(フロッグマン)があって、夜は荻上チキがやってる「セッション22」。セッション~まではなかなか聞かないけど。
─あら、パーソナリティを聞くと、なんだかわりと若い人向けな感じ? 大沢悠里の「ゆうゆうワイド」は終わっちゃったんだよね。
富/そうそう。でもね、やっぱ朝は、おじいちゃんおばあちゃんも聞いているみたいね。まむしさん(毒蝮三太夫)も相変わらず出てるしね。(注:「ゆうゆうワイド」は土曜日版として継続中です)
─週末はさ、「らんまんラジオ寄席」っていうのやっててね。
富/あ、いいよね、あれ、いいよね。らんまんラジオ寄席。
─今でもやってるんだ! あと、ラジオ図書館とか。
富/ラジオ図書館って、森繁久彌さんの?
─森繁久彌さん、出てた、かな? それこそ、純さん(新井純さん。元黒テント俳優。こんにゃく座公演『
魔法の笛』初演モーツァルト役で客演)とか村さん(村松克己さん。黒テント俳優。こんにゃく座公演『
十二夜』初演サー・トービー役などで客演)とかが出てたの。
ラジオは何かやりながら聞いているの。家にいるときはずっと流している?
富/そやね。朝起きてラジオつけて。テレビは見たいやつだけ録画して見て、それ以外はほとんど見ないからさ、だからスキャンダル的な話題は、座のお茶場でみんなから聞くか、ツイッターで知るかっていうそんな感じ。
─ラジオの、ここがいいな! と思うところは。
富/なんやろね、人の声がほっとするんねやろね。別に音楽を聴きたいわけではないし。おしゃべりとかそういったものが。
─この人のこの番組が好きとかあるの。
富/月曜深夜の「東京ポッド許可局」っていうのがおもしろい。これはお笑い芸人三人がいろいろしゃべるってだけの番組。マキタスポーツ、プチ鹿島、サンキュータツオの三人。これ、おすすめ。一回聴いてみて。毎回いろいろしゃべるの。たとえば、「大相撲のいいところしゃべってみよう」とか、あと「冷めてもおいしい食べ物の話」とかね(笑)。あとね、本を紹介するコーナーとかもあって、それで紹介された本も読んでる。それで、去年ね、結構おもしろかった本があって、持ってきてん。去年の私のベストです。どっからいこうかな。
─これ知らない。「宮部みゆき責任編集 松本清張傑作短篇コレクション・上」。
富/これは、宮部みゆきがセレクトした松本清張の短編コレクションらしいねんけど。俺は松本清張読んだことがなかったから、入門編として。この中のでいうと、「真贋の森」がおもしろかったな。松本清張の作品の前に宮部みゆきの前口上があってね。
あとこれは、ちょっと前に出た本やけど「猟師の肉は腐らない」っていう、あの腐っているものがおいしいっていう先生いるやん、小泉武夫先生、その人の小説。セミドキュメンタリーっぽい感じなんだけど、食べ物の描写がめちゃめちゃおもしろい。すごくおいしそう。
それでね、次はこれね、「1984年のUWF」。これは、UWFっていうプロレスと格闘技をどっちも目指して、真剣勝負のプロレスっていうのを標榜した団体があって、1980年代に大ブームになったの。それがあっという間に衰退してしまうねんけど、それについての本。
あとね、これが去年一番おもしろかった、ナンバー1! 「いつも、気づけば神宮に 東京ヤクルトスワローズ「9つの系譜」」。“文春野球コラム”っていうプロ野球コラムのペナントレースがあって、いろんなコラムニストがそれぞれ担当のチームのコラムを書いて、毎週コラムで対決するっていうのがあったわけ。俺はヤクルトになんの思い入れもないけど(笑)、すごい読んでておもしろかった。著者の長谷川晶一っていう人がヤクルト担当で、ヤクルトが大好きすぎてそのヤクルトの関係者にずっとインタビューして、集めた記事なのね。これは本当におもしろかった。ヤクルトってすごい球団だなって思った。
─球団とか野球に興味がない人が読んでもおもしろい?
富/これはもうぜんぜんおもしろい。
そんで、次におもしろかったのがこれかな、「久米宏です。ニュースステーションはザ・ベストテンだった」。これ、よかったよ。久米宏がラジオから世に出てきて、ベストテンとかぴったしカンカン出て、でも本の中で一番多くページが割かれているのはニュースステーションについてなのね。当時いかにニュースステーションについていろいろ考えていたか、ていうのがよくわかる。
で、「黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い」。これがね、これはツイッターでこの著者の畠山理仁さんのことを知ったんだけど、畠山さんは選挙に出馬した人を、なかでもいわゆる泡沫候補と言われている人をずっとおっかけて取材しているの。畠山さんの信念は、知らなすぎると、みんな。どんな人でもどんな意見でも、立候補した人の意見はみんなが知るべきだ、ていうことなんだよね。それでびっくりしたというか俺が知らなすぎやねんけど、選挙って出るのに、都知事選で300万円とかかかるのね。みんなばかにしているけど、300万円払って、かえってこないけど、また出るってなんや、信念があんねややっぱりって。へんな言い方だけど、この中の人たちが言っていることってよっぽど小池さんよりわかりやすい。これはねちょっと目から鱗というか、ばかにしていた僕がすみませんでした、ってなる。
─気づかされる。
富/そうね。情熱すごい。だって300万円集めてやんねんで。かえってけぇへんのに。マック赤坂さんにいたっては、東京以外にもいろんなところの選挙に出て、それでもまだ出ているっていうのはやっぱり、うん。たとえばさ、ちょっとねじがはずれたようにみんな思っているかもしれなけど、これ読むと、かなりまともって思う。よっぽど。これおもしろかった。ちょっとなんかね、スキャンダラスなような見た目だけど、中身は熱い。
それからもうひとつ「東京ポッド許可局」で知った、「富山市議はなぜ14人も辞めたのか」っていう岩波から出てるやつ、これもめちゃくちゃ面白くて。ノンフィクションなんやねんけど、本当にミステリーを読んでいるようやったね。
あとね、小説で面白かったのは、これ。恩田陸の「蜜蜂と遠雷」。これさー、俺こういうのってあんま手をつけてなかったんだけどさー、直木賞も本屋大賞もとるのはおもろいよな。
─恩田陸は初めて読んだ?
富/初めて。ようけ書いてるやんあの人。しかもこれ二段組で500ページやろ。
─そうそう、でもあっという間に読めるよね。
富/あっという間。これね、久しぶり、寝る間を惜しんで読んだの。三日間くらいで。
─わかるわかる。
富/めちゃめちゃおもしろかったわー。でさ、誰かが「音楽が聞こえてくる」みたいなこと言っていて、それはなかったけど、でも、やーおもしろいおもしろい。で、こういう人のピアノ聞いてみたいってときに、(『天国と地獄』の稽古に)あの五味さん(五味貴秋さん。ピアニスト)が来たりしてさ。あ、なるほど、男性のピアニストってこういうことか、みたいなさ(笑)。でまたさ、この、言葉の使い方とかものすごい考えてねんやろなって思うわけ。回想していくところとかさ。読みながらぼろぼろ泣いたりするやん。すごいわーって思った。
─ジャンルとしてはどういう系が好きなんだなって自分では思う?
富/こうしてみてみるとノンフィクション多いなって思った。ノンフィクションとかルポみたいなのが好きなんだなって思うよね。本を読むきっかけは、中学校の時に、教科書とかで星新一を知って、星新一を読んで。そのあとに親戚のお姉ちゃんのすすめで遠藤周作を読みだして………、去年観た映画「沈黙」すごいよかった。あれ絶対見て。マーティン・スコセッシすごいと思った。ま、ええわ、それは置いといて、それから高校の時に友達が筒井康隆を勧めてくれて、そこから筒井康隆を読んだ。ほとんど読んだんちゃうかな。びっくりしたのが腹を抱えて笑うわけよ。マンガじゃないのに腹抱えて笑うなんてめっちゃ新鮮で。
─図書館でじゃなくって、全部買ってるんだね。
富/やっぱね、買うのが大事だと思って。あのさ、買える時に買っとかんと、なんやろなー、この人(著者)にお金が行くといいよなぁって気がするわけ。だからその、お芝居のチケット買うみたいなもん。
─家に溜まっていくでしょ。
富/溜まるね。どないしようかと思ってんねんけど。だから、売るかな、どうしようかな、とか思うけどね。今はまだ…。でもな、本棚はみ出してきているからな。
─ラジオ、もっと聞けばいいのにね、世の人々がね。
富/そやね。あとね、夜やっているやつで、神田松之丞っていう講談師が火曜日から金曜日に10分間だけやってる、なんかね、愚痴をひたすら言い続けるっていう番組。
─いくつくらいの人なの?
富/34歳。この人がいま一番勢いがあるって言われてる。この人のラジオを聴いていて、すごく講談を聞いてみたくなって。新宿末廣亭で松之丞さんの師匠の神田松鯉っていう人がトリをつとめるのがあって、そこに松之丞さんも出るっていうので聞きにいって、さすがや、おもしろいなって思った。それでまた、師匠の神田松鯉っていう人がその時にやった「神崎の詫び証文」っていうのがね、もうね、大号泣ですよ。すんごかった。物語をね、張り扇でリズムをとって、読んで聞かせるっていうのが講談で、ま、読むというよりもだいたい覚えているもんやけども、こう、調子があって、おもしろい。テンポがあって。落語とも違うよね。間というか、緩急と音の高低。それを使ってやるのね。こういうことを、こんだけ飽きずに聞かせるっていうのは、すごく考えられてるんだなって思うすごい話芸。何かこう、自分たちの表現にも活かせるヒントがあるかもって思う。
番組でメールを読まれないともらえない、富山以外の人にはあまり価値がない宝物
(聞き手・田上ナナ子/こんにゃく座制作)
今回紹介したラジオ番組(全てTBSラジオ FM90.5MHz+AM954kHz)