◆3 オペラ『ふしぎなたまご』出演者トーク 野うるお&高岡由季
左)オペラシアターこんにゃく座 歌役者 野うるお(たかの・うるお)
1999年入座。東京都府中市出身、国立音楽大学卒業。
右)オペラシアターこんにゃく座 歌役者 高岡由季(たかおか・ゆき)
2014年入座。富山県高岡市出身、東京学芸大学卒業。
1999年入座。東京都府中市出身、国立音楽大学卒業。
右)オペラシアターこんにゃく座 歌役者 高岡由季(たかおか・ゆき)
2014年入座。富山県高岡市出身、東京学芸大学卒業。
約20年振りの再演。初演との違い
─うるおさんは、初演に出演していますよね。
うるお/もう20年も前のことで、そんなに覚えていないんだけど、稽古していると、あ、こんなことしてた、って、ところどころ思い出す感じ。今回とあまり変わらないところは、やっぱりみんなで考えながら作っていったんだよね。なんか風船を椅子につけたりとか、ステンレスのボールみたいなのを7つ出して幕の下からこうやって置いてとか、やってたな。
─初演と今回の再演の違いっていうのは、どういうところですか。
うるお/それはもう、今回のあの“動き”だよね。もう、動きがたっくさんあるっていう感じ。
─白神ももこさんの振付。白神さんとは今回初めてですけれど、どんな感じ。
由季/なんていえばいいんですかね、シュール、かな。なんか。なんだろう、なんかね、ちょっと必ずどこかが一筋縄ではいかないっていうかね、ゆがんでいるんです。
うるお/そう。あと、歌舞伎っぽくっていう。形をわりと大きく見せるっていうことをやってみていて、だから振り付けもちょっと大仰な形を最初は目指して、それを段々に整理していくみたいな感じ。ただこれは、本番までの間でどうなっていくか、まだわからない。
それと、白神さんの振り付けって、白神さん自身がやるとわかるんだけど、それを出演者がやってみると、ただバタバタしているだけになってしまっているから、そこらへんがもうちょっと。
由季/慣れと、理解と(笑)。でも最初に大きく作って、それを整えていくっていう感じは、おもしろい気がする。
─由季は、入座は何年だっけ。
由季/えっと、いま6年目なので、2014年です。
─ということは、光さんが亡くなってからの入座なんだね。光さんと会ったことは?
由季/わたしはですね、『ねこのくにのおきゃくさま』(2011年2月公演)のアフタートークでしか、直接お見掛けしたことはないんです。
稽古場の様子
由季/今回の稽古場で直さん(演出の加藤直さん)がよく言うのが、「平気で」と、「批判的に考える」っていうふたつ。なんでも批判的に考えなきゃだめだって。
うるお/光さんの音楽とも、それとちゃんと向かい合って、ていう意味だと思うんだけど、ただただ受け入れて歌うんじゃなくって、どういう音楽かっていうことを自分たちでつかんで、表現しよう、みたいな。
由季/それと今回は、入川さん(ピアニスト入川舜さん)によって新しい風が吹いていて、音楽稽古の時に、入川さんからのサジェッションがあって。ここはこうで、音楽の流れがこういうふうにかわるから、こういう風に歌ったら、とか、大きさはもう少し小さいといい、とかね。
─それはどうなの、みんなどういうふうに取り入れているの。
由季/まずは、批判的に向き合って(笑)
うるお/まぁ、そうしようかって言ったり、それはいいかってなったり。取捨選択しながら、取り入れたり、捨てたりしながら。
由季/音楽と、物語がどう伝わるかってこととのバランスとかもみながらね。
うるお/入川くんの視点は、音楽を解釈してそれをどう表現するかっていう視点で、それもとても大事なこと。でも動きとか、芝居の要素もあるから、音楽と、動きとか芝居的要素とが、お互いに引っ張り合っていいところが探せればね。
ひとつ、おもしろかったのがさ、振付の白神さんが、「♪チャチャチャチャチャチャ チャン チャチャーン、のところ…」て言ったら入川くんが「♪(チャン チャチャーンではなく)チャチャチャン、です」ってボソって言った(笑)
ホジェラ巡査が物語を進めていく
─ホジェラ巡査として、由季が一番最初に登場するんだよね。こう、作品の空気を決めるっていうか。
由季/ひえー! そうですね。そして、稽古の途中でわたしのセリフが増えましたよ!
うるお/章ごとに楽譜にタイトルが書いてあって、いままでは、シーンごとに誰かが言っていたんだけど、ホジェラが物語を進めていくってことで、ホジェラが言うことになった。
由季/ハ、ハ、ハ! そうなんですよ! 直さんの作品って、そういう役割の人いるじゃないですか。わたしは、『魔法の笛』をまた公演するとしたら、モーツァルト役がやりたいんですよ。それくらい、直さんのつくるあのポジションに憧れていたんです。
─ちょっと物語を外から見ているみたいなね。
由季/そうそうそう。ああいう不思議な存在がやってみたいなーって。
─今回ホジェラ巡査は、そういう役割に近いんだね。
由季/そうなんです。
みんなヘンテコな人。
─『ふしぎなたまご』のお話じたいは、すべてがファンタジーではなくって、現実的な世界の中に、ふしぎな要素が紛れ込んじゃったって感じなんだけど。
由季/役がみんなトリッキーで、みんなヘンテコな人になっている。普通の人いないですよ。
─銀行の課長さんも?
由季/課長さん、へんへん、へん! めっちゃへん! 大家とか銀行の課長さんとか、台本に書かれていることはめっちゃ真面目なのにね。
うるお/直さんと白神さんとの間で、ちょっとデフォルメっていうか、そういう言葉を白神さんなりに考えて、銀行の課長も、パソコンいじって、上司の顔色をうかがって、みたいな様子をちょっと大きく広げてやってみる、ていうような感じ。大家さんも、自分の家に竜がいるなんていやだっていう感じを、動きで表現している。トルチナだけが普通に、ごく普通な人になっている感じ。
由季/トルチナが、本当につまらない人間に見えますよね(笑)。
光さんの音楽
─『ふしぎなたまご』の光さんの音楽はどう感じてますか。
うるお/ハーモニーがおもしろいよね。
由季/おもしろい!
うるお/目指すのは、あれだけデフォルメした動きとアンサンブルがびちっとはまってる、ていうところかな。そうなったらいいなって思うんだよね。びちっとはまると、あ、こういう音なのか、っていう感じがするの。はまらないとなんだかよくわからない感じがするんだけど。はまると、ああこういうふうに音が響いているんだって。目指す音みたいなのがわかる感じがする。
由季/すごいおもしろいし、きれいなんですけど。ホジェラ巡査の歌は高いんですよね。めちゃくちゃ。大石さん(大石哲史)に、「ここが言葉がわからない」て言われて。言葉わからないとね、こんにゃく座じゃないですから。
─白神さんの、身体性を駆使した動きと、光さんの音楽と。そこがばちっとあってきたら、初演とはまた違った面白さが生まれるかもしれないね。
こどもたちにも
─こどもたちにはどうだろうね、このお話。
うるお/動きがおもしろいのと、たまごからかえるとか、竜の表現とかおもしろいんじゃないかなって思う。
由季/きっと楽しいと思いますよ。目で見えているものがずっとおもしろいから、言葉がちゃんと通じれば、物語もわかりやすい話だし、楽しいんじゃないかな。
─言葉が通じれば。
うるお/そんなに難しいことは言ってないから、トルチナが疎まれている感じとかもわかると思う。トルチナが竜と一緒に散歩をするシーンがあって、それがダンスで表現されるんだけど、そこは言葉(歌)もない、音楽だけだから、だれが見ても楽しめると思う。
由季/七つ頭の竜の表現も、いま何形態あるんでしたっけね。
うるお/五形態だね。
由季/どんどん大きくなっていく五つの竜の姿も、どう表現されるか、ぜひ楽しみにしてもらいたいです。
うるお/さっきも言った、トルチナが竜と一緒にダンスするシーンは、この作品が6人の出演者で表現されているっていうことが一番見えるシーンかなって思う。そのダンスのシーンは6人全員が出ているんだけど、トルチナと、5人で表現している竜っていうのではなくて、出演者6人で、トルチナと竜を表わしているっていうシーンだと思うんだよね。6人でこの物語をやっておりますっていう感じで、表現しているっていうか。だからあのシーンはとてもいいと思う。
公演に対する意気込み
由季/意気込み…、意気込みねぇ。そう言われるとなんだろう。うるおさんからどうぞ。
うるお/えー。そうだね…。歌というか、音楽と動きとが、溶け込みすぎずに、少し混ざり合っている、ていう感じのところに行きたいって思う。音楽性と動きとが溶け込みすぎちゃって、全部自然に見えるっていうんじゃなくって、ちょっとはみ出てるみたいな形になるといいなと思う。大家とか銀行の課長とか、保健所の人とかみんな変な動きしながら歌っていて、それが変なんだけど、こういう人たちってこんな感じかもっていうように見えてくると、ちょっといいよねって。
由季/わたしもそう思います!
─ダメです。自分のことばで言ってください。
由季/なんか海外のアニメとか、アニメが日本で始まりはじめた頃のアニメとかのデフォルメ感。日常の人間の動きじゃないけど、でもおもしろくって、アニメでしかできないよねっていうようなこととかが、リアルではこんな動き絶対しないけど、舞台で見るからおもしろいみたいな。わたしは今回は、語りでもあるし、そんなちょっとおもしろい動きができたらな、って思うんです。
こんにゃく座会議室にて。聞き手:田上ナナ子(制作)
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