こんにゃく座と宮澤賢治

◆オペラ『想稿・銀河鉄道の夜』出演者インタビュー その1 2016-11-16

高岡由季
高岡由季(たかおか・ゆき)
2014年入座
富山県高岡市出身
東京学芸大学卒業

オペラ『想稿・銀河鉄道の夜
少女、生徒役 ほか

■こんにゃく座に入ったきっかけ

高岡/東京学芸大学のゼミでこんにゃく座の日本語オペラをやっていて、その時に教えに来てくれたのが大石さん(大石哲史)でした。『フィガロの結婚』、『セロ弾きのゴーシュ』、『ロはロボットのロ』、『カルメン』とゼミで取り組みました。

―大学に入る前は、舞台に興味があったとか、音楽をやりたいとか思っていました?

高岡/小学校の時から、わーわー歌うのは好きで、高校の時にバンドで歌ったら、みんなに上手い!と言われて、歌手になりたい!と思ったこともありました(笑笑)。ミュージカルをやりたいと思ったこともあり、ともかく人前に出るのは好きでした。
それから、東京の大学に行きたいと思い、結局学芸大にはいりました。

―この世界で仕事としてやっていきたい、と思ったきっかけは?

高岡/それは、学芸大学のゼミでオペラ『セロ弾きのゴーシュ』に取り組んで、学芸大の付属の小学校で公演した時に、子どもたちがお礼のお手紙をくれて、感激して…、自分本位でしか歌ったり表現したりしかしてこなかったのだけれど、その時に初めて誰かのために歌うのってこういうことなんだなぁと思って感動しました。表現する側と受け取ってもらう側の関係というのを実感して、初めてつながったという感覚がして、その体験が忘れられなくって。

―学生の時に、すでにこんにゃく座のオペラを実践する機会があって、そのままストレートにこんにゃく座でやっていこう!って思ったのかな?

高岡/最初はそこまで思っていなかったのですが、先輩の大翼さん(島田大翼)から学校公演の現場を見学しに来ないかって声かけてもらい、オペラ『森は生きている』の学校公演を何回か見学させてもらったり、手伝わせてもらう機会があって、その時に、あぁこういう仕事があるのか、自分…これで生きていってもいいのかな、生きていけるのかも、と思うようになり、卒業する頃には、完全にこんにゃく座に入りたいな、と思うようになりました。

■宮澤賢治作品との出会い

高岡/小さい頃は、近くにある本を手当たり次第読んでいるような子どもで、宮澤賢治に限らず本を読むのは好きでした。初めて読んだのは、「月夜のでんしんばしら」だったような気がします。どこがどうとか、誰が何だとかいうわけでなく、子どもなりの感覚で、なんともいえない語感とかが楽しくて、大きいでんしんばしらが何か愛らしく横に揺れながら歩いている情景を思い浮かべたのを今でも覚えています。
その後はあまり縁がなく、大学のゼミで『セロ弾きのゴーシュ』をやった時に、それが一番好きになりました。こんにゃく座のオペラの中でも、『セロ弾きのゴーシュ』が一番好きなんです。あぁ、『銀河鉄道の夜』をこれからやるから、今度からそれが一番!て言い出しそうですが(笑)

―どういうところが面白いって感じたのでしょう?

高岡/ゼミでは、幸運にもゴーシュ役をやらせてもらい、すごく苦労したのですが、動物たちによって成長していくのを実体験していく感じで、ゴーシュさんの気持ちにすごく共感したんですね。
オペラだからなんだけど、音楽がそのまんま…、歌うと本当にゴーシュさんのそういう気持ちになれるっていうのがすごいなぁって。

■オペラ『想稿・銀河鉄道の夜』について

―子どもの時に読んだり、絵本で「銀河鉄道の夜」に出会っていたりしていた?

高岡/大人になってから読みました。帰省したときに、実家でお母さんが読んでいて。ゴーシュをやった後だったので、“宮澤賢治”という文字が目にとまって手に取ったら「銀河鉄道の夜」だったという感じでした。
でも最初の印象は…なんだかよくわからなかった(笑)。ずっと夢の中にいるような感じ。だけど、さっき言った「子どもなりの感覚」ではないですが、なんとなく言葉の流れが心地よくて、すらっと最後まで読めてしまいました。そのことが印象的でした。
キャスティング発表のプリントを配られた時も、まさか自分が出演することになるとは全く思っていなかったので、なんだか見逃していて、となりにいる先輩に「良かったね」と言われて初めて気づいたって感じです。あぁ「少女」だったと。

―その「少女」の役づくりとしてはどう?高岡にとっては初演になるけれど意気込みをどうぞ!

高岡/そうですね…。銀河鉄道に乗っている人たちの中で唯一「死んでいる」ってことがはっきりとわかって、それがすごく、印象的に、魅力的に感じます。ミステリアスで、はかなくて、なんかドキッとして忘れられないです。さめざめと泣いていたかと思えば、バカって言われるくらい一生懸命にさそりの話をしたり、「たったひとりの神様」について議論したり。
普段の私は、バカで単純で、一直線なことだけが取り柄みたいな感じなので(苦笑)、それを全部活かしつつ、このオペラのことばと音楽と全力で向き合って、ジョバンニ、カムパネルラ、そしてお客様みんなの心に“チクッ”とする何かを残せる少女をやりたいです。
こんにゃく座では、新演出での再演という形ですが、初演のときは入座していなかったので、私にとっては初演です。一部の新キャストの中の1人なので、それに対してのワクワクと不安がすごく大きいです。精一杯、全力を尽くして楽しみたいです!

高岡由季
2015年 オペラ『白墨の輪』

(聞き手・忠地あずみ/こんにゃく座制作)