オペラ『森は生きている』新演出・オーケストラ版 特集ページ
インタビューVol.3眞鍋卓嗣〈演出家〉
このたびオペラ『森は生きている』が眞鍋卓嗣さんの演出によってあたらしく生まれ変わります!昨年12月に紀伊國屋演劇賞個人賞などを受賞し、演劇界でもっとも注目されている眞鍋さんに、演出についてのこだわりや演劇に対する想いなどをお聞きしました。
――これまでに2016年『Opera club Macbeth』、2019年オペラ『遠野物語』を演出していただき、こんにゃく座そして歌役者の新しい一面を引き出して頂いたと感じています。この2作品をとおして、こんにゃく座という劇団について、どのような印象をお持ちでしょうか。
一番に思っていることは劇団としてのまとまりですね。自分が劇団(劇団俳優座)にいるからかもしれませんが、そこがすごく感心してしまうところです。
役者さんそれぞれがスタッフワークもちゃんとしている。みんなトラックを運転できるんでしたっけ?
――(笑)みんなではないです。でも入座したら可能な限り免許をとってもらいます。
各自がこんにゃく座らしさというものをわかっていて、いろんなところにお芝居(オペラ)を持っていくんだ、自分たちはこういう団体だという理念が共有されている。芝居作りというのは自分たちで関わり合いながらやっていくというのがちゃんと行き届いてますね。
あと、うたを歌っている方たちは明るいというか、緩やかというか、解放されているというか。
努力のしかたが他人とか自分を追い込む、苦行のようなものとは違いますね。
歌うっていうことは、体に浸透させていく方法が何か芝居とは違うんでしょうね。
――演出家の存在がどんなものか、演出家とはどのような役割か、その一端をご紹介いただけますか?
衣裳打ち合わせ
左:衣裳プランナーの山下和美さん
演出家はそれらすべてに目を行き届かせることになります。
それから役者さんの行動や発言や歌がちゃんと浮き立つようにしたいというのがあるので、それなしに演出家が先行してしまうのは嫌ですね。整合性がとれないとやらない、それを心掛けています。
稽古に行く前は、基本的に作品のことをギリギリまで考えていて、それでも答えが出てこない時があります。同時に全部のことを考えられないので、脳みそが4つ位あったら良いなと思います(笑)。
でも実際、出演者と一緒に稽古をしていくと考えていたとおりにはならないんですよね、絶対。現場でどう導いて、その場で作り上げていくことをリアルタイムでやっていくしかない。その作業のくり返しですね。
2019 年オペラ『遠野物語』稽古場にて
オペラの演出でおもしろいなと思ったのは、音楽を聴いているとなにか思い浮かぶんですよね。
この旋律は何をあらわしているんだろうかとか、ここはこういう解釈なんだろうなぁとか。
そんな風に聞いていると、だんだん自分の中にあるもの(やりたいこと)が何となく感じられてくるんです。
それから東京二期会の「メリーウィドー」(2020年11月)を演出した時に、同じ音楽でも10年前に録音されたものと現在の演奏は全然違うなと思いました。指揮者によってだいぶ曲調が変わりますね。
時代感覚を指揮者がどう意識しているのかわからないですけど、やはり時代が反映されるものだなと感じますし、指揮者の影響は大きいと思います。
――演出家になる前は音楽活動をされていたのですね。
最近音楽をやっていたということをいじられることが多くて(笑)。
昔は演出家としてのキャリアもなかったので、そういうことを(プロフィールに)書いてました。
音楽をやっていたことが、実際役立っていることはありますね。それはやっぱり形にないものを作った経験っていうんですかね。一番おもしろかったのは作曲だったんですよね。2人組のバンドで、2人とも作詞、作曲をしていました。
何もないところから、インスピレーションをもとに、感覚だけで何とか形にしたっていう経験は今でもすごく生きています。
昔からお芝居は好きで、ミュージカルも子どものころから見ていました。
音楽の道か、お芝居の道か、どちらかで生きていけたら良いなと思っていました。
――今年2月にどのようなオペラ『森は生きている』が誕生するのか、私たちも楽しみにしています。 この作品をどのように立ち上げていくのか、今現在考えていることを教えてください。
森の神秘性っていうんですかね。
そういうのが簡単なことばで言えばふつうにわくわくすると思っています。
ぼくは劇場に入ってミラーボールが回りだすと泣き出す子だったんですけど、でもあの時の子どもがこうやってお芝居をつくっているわけです。怖かったんだけど、同時に楽しかったんだと思いますね。
なんて(おもしろい)世界があるんだろうと、きっとその時思ったんですよ。その楽しさを伝えたいと思います
今の子どもたちが何を楽しいと思うのか、
自分たちが子どもの時思っていたものも見てもらいたいと思う反面、
ぼくらが思っていることはつまんないかもしれないから、
それを押し付けたくはないなと思っています。
――舞台芸術の持つ力はどんなところにあると思いますか。
演劇って言葉では言い尽くせない魅力があると思っています。生身の人間が集まって、スタッフも含めてひとつのものを作り上げるエネルギーがある。
結局ぼくは演劇にいろんなことを教えてもらって変わったと思っています。
(演劇は)嘘なんですけど、人間がそこに身をなげて心を震わせてやっているわけですから、どこかで虚構、嘘と現実が混ざる瞬間がある。
そうやって伝えるものだから人生観に作用すると思っているんですよ。
影響をちゃんと与えることができる。
人生の岐路とか、何か迷った時に、ああいうこと言ってたなとか、あの感じだなとか、そういう風にいつの間にか入り込んでいるものだと思います。
ドラマの登場人物の人生をとおして知らないことを教えてもらえますしね。人間としても成長できたという実感があります。
眞鍋さんとともにオペラ『森は生きている』の稽古がいよいよ始まります!
これまで何度もこの作品をご覧いただいた方も、今回はじめてご覧になる方も、すべての方に楽しんでいただけるよう、出演者、スタッフ一同励んでまいります。劇場でお会いしましょう!
※新型コロナウイルスが感染拡大している状況を踏まえ、しかるべきガイドラインに沿って公演の準備を進めております。もし何らかの方針の変更がでましたら随時お客様へお伝えいたします。どうぞご理解ご協力の程お願い申し上げます。
(劇団俳優座公演「雉はじめて鳴く」、名取事務所公演「少年Bが住む家」の演出の成果)
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(名取事務所「少年Bが住む家」の成果)
眞鍋卓嗣さんが受賞しました!おめでとうございます!
(聞き手)湯本真紀 高橋志野/こんにゃく座制作
2020年12月・新宿にて
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