こんにゃく座と宮澤賢治
◆オペラ『グスコーブドリの伝記』出演者インタビュー その2 小林ゆず子 2016-07-20
◆こんにゃく座に入ったきっかけ
小林/初めて出会ったのは小学生の頃で、大垣(岐阜県)のおやこ劇場に入っていて、6年生の時に『ロはロボットのロ』を例会として観た時です。もともとピアノをずっとやっていて音楽が好きだったので、お芝居と音楽が一緒になっている世界が、めちゃくちゃ楽しくって、ピアニストさんもすっごいかっこいいし、「なんだこれは!」ていう衝撃がありました。
「テトのパンはあ」は、耳に残る歌なので、妹と二人でずっと歌いながら帰りました。でも、今回再演した時に楽譜を見たら、歌詞がぜんぜん違って(笑)。
高校2年生の、進路を悩んでいた時に、今度は『どんぐりと山猫』が例会になったんです。事前にワークショップが2回あると知って、これに出たらきっとこんにゃく座の人とお話ができる、と思い、どんぐり役での出演は、本当は小学校3年生〜中学3年生対象ていう規程だったんですけど、お願いしてみたら、まぁいいんじゃない、となって(笑)。
そのワークショップで、岡原さん(岡原真弓)と、朋さん(石窪朋)がきてくれて。その時すごくお話をして、やっぱりこの世界好きだなぁと思いました。そのぐらいの時から、こんにゃく座が、なんとなく将来の夢の中に入ってきたという感じはするんですよね。
─ピアノを小さい頃からやっていたって言っていたけど、自分が歌うっていうことはどこらへんからどう始まったの。
小林/最初にこんにゃく座のことを思い描いていた時は、やっぱり自分はピアノを弾く人として、というふうに思っていたような気がするんです。どっからそれが歌に移行していったのかなと思うと、やっぱり岡原さんに連れて行ってもらって「親子どんの会」とかでちょっと歌うとかっていうことがあって、最初は漠然と「こんにゃく座」が好きと思っていたんですが、東京に来てから、学校公演とかも見せてもらって、舞台だけじゃなく、仕込みしてバラシしてっていうこととかにもすごく魅力を感じて、すごいステキだって思ったんですね。やっぱり全部をやりたかったっていうこと。
歌は、ピアノを弾いている時代にも、ピアノって楽器に向かっちゃうから、外に出すとか、前に出すとかっていうことをやるためにも声楽は学んでみたほうがいいんじゃないってピアノの先生に言われて、ちょこちょこ副科程度に歌ったりはしていたんですね。
最終的に歌を選んだのは、単純にたぶん感動したんだと思います。こんな感動を与えられるってすごいって思って行った積み重ねで、どんどんそっちのほうに、ベクトルが向いていっちゃったっていう感じなんじゃないかな。
◆宮澤賢治作品との出会い
小林/母も祖母も、読み聞かせが好きな人なので、絶対それが出会いだと思うんですけど、この作品、というのは覚えてはいなくって。小学校の授業で、賢治の作品が教科書に載っていて、そこから発展した学習で、グループで好きな賢治の作品を選んで、絵を描いたりした覚えがあります。自分が何を描いたかはぜんぜん覚えていないんだけど、友達が「どんぐりと山猫」をとりあげて、すごいカワイイどんぐりの絵を描いたことは覚えてる。
─では、意識して賢治を読んだり作品を見たりしたという最初は?
小林/こんにゃく座の『どんぐりと山猫』が最初かもしれない。同じくらいの時期に、「よだかの星」は、祖母からきちんと渡されて、この作品は良いから読んでみな、と言われたことは覚えています。
◆オペラ『グスコーブドリの伝記』
─読んでみて、感想は?
小林/当たり前だけど、伝記だから、なんか、伝記なんだな、って思ったっていうか、他の賢治の物語とはちょっと違った感じがした。基本、登場するのが人間ばっかりじゃないですか。だからわりと現実的な感じがする。ブドリに妹がいるってこととか、鉱石のこととかを読むと、自然が好きな賢治だから、なんとなくちょっと自分と近いというか重ねていたりする部分があったりするのかなと思ったりしながら読みました。
─作品の内容からは何を感じた?
小林/切ないですよね。あんなにいろいろ大変な目にあって、自分の居場所をみつけて、それで人の役にたちたいっていう思いがすごくあるのに、せっかくそれが実現してきているところで、最終的に、みんなのためにそういう道を選ぶのか、ていうのが。
綺麗といえば綺麗なのかもしれないけど、あまりに切ないなと思って。病気とかではなく、死んでいくっていう結末を書いた賢治の気持ちはどういう気持ちなんだろうな、とか、すごい思いますね。切ないなこれ、どうやって終わるんだろうなって。本で読むのだったら、この切なさっていい感じに思ったりするんですけど、それが舞台になってこの切ない結末っていうのが、オペラを観終わってどう思って帰ってもらえる作品になっていくんだろうな、って思いました。
─なるほどね。今回出演者といろいろ話をしたり、制作メンバーでも内容について話をしているんだけど、人によってね、ずいぶんこのお話から感じることが違うんだよね。
小林/そうですね。これでまた子どもが観たら、またぜんぜん違う視点から見えたりするのかもしれませんね。
─今回の役名は、のんのんのん。台本・演出のしまさんが、賢治作品の中からとってきているんだけど。
小林/はい。みつけました。「オツベルと象」のなかに! ええと脱穀機でいいのかな、その音です。本でみつけて、脱穀かぁ〜、そうかぁ〜、と思って(笑)!
※おとゆいむしとは…壹岐隆邦、沖まどか、小林ゆず子、川中裕子、島田大翼、高岡由季の6名による座内ユニット。2015年7月にコンサート「夏・聞こうぜ 2015 ヨーイ・ドン!」を開催した。(期間限定ブログ)
(聞き手・田上ナナ子/こんにゃく座制作)