こんにゃく座と宮澤賢治

◆オペラ『グスコーブドリの伝記』出演者インタビュー その1 壹岐隆邦 2016-07-13

壹岐隆邦
壹岐隆邦(いき・たかくに)
2010年入座
埼玉県所沢市出身
武蔵野音楽大学卒業

オペラ『グスコーブドリの伝記
目の鋭い男、おじいさん、シュッポォン 役

◆こんにゃく座に入ったきっかけ

壹岐/2008年に、バイト先の入間市文化創造アトリエ・アミーゴというところで、こんにゃく座の『どんぐりと山猫』をアミーゴの主催事業で公演することになったんですね。それが、子ども参加型のオペラで、参加する子どもに歌を教えるというボランティアをしたのが、こんにゃく座を知るきっかけでした。子どもたちに歌を教えて、実際に本番を観て、それで、こんにゃく座を好きになってしまったということです。

─歌うことをはじめたのはいつくらいから?

壹岐/高校2年の時に合唱部に誘われて、そこから歌うことをはじめました。高校を卒業したら、音楽を本格的にやりたくなって、浪人をして音大を受験して、そこから音楽にのめり込みましたね。
大学の時は、特別オペラをやりたいとは思っていなかったんですね。でも、卒業と同時に、先輩にやってみないかと誘われて舞台に出たのが楽しくて。

─なるほどね。アミーゴでこんにゃく座のオペラと出会って、その後にこんにゃく座の他のオペラも観たの?

壹岐/はい、こんにゃく座に出会ってから入座するまでの本公演すべてと、近くでやっていた一般公演はあらかた観ました。『どんぐりと山猫』の時に、打楽器奏者として萩窓子さんが来て、その後、『変身』の稽古場見学に誘ってもらったり、座員募集をしているよ、ってことも教えてもらったんです。それでオーディションを受けて、入座しました。

◆宮澤賢治作品との出会い

壹岐/小学生の頃とかに、きっと読んだはずなんですけど、全然記憶にないんですよ。児童文学とかは読んでいたんですけど…。宮澤賢治は難しいと感じたのかもしれないです。

─小学校の教科書で読んだ、という人が多いけど。

壹岐/そう、読んだはずなんです! きっと読んだんでしょうけど、覚えていないんです。絶対読んでいるはずなんですけど…。絶対「銀河鉄道」とか…。うっすらとはあるんですよ。古いもの、というか昔書かれたものに苦手意識があったのかもしれないです。

─そうすると、自分の記憶にある、一番最初の賢治の作品っていうのは?

壹岐/歌になった詩から、なんですよね。結構合唱曲とかでも、宮澤賢治の「雨ニモマケズ」とかも曲になっていますし。

─歌うことばとして賢治に出会って、賢治のことばに対する印象とかってある。

壹岐/やっぱり独特のものがありますね。歌になってやっと初めて、リズム感じゃないけど、独特の空気感ていうのはわかりましたね。だから、どっちかというと、賢治のことばは、小説とか、童話というよりもなんか詩というイメージが強いです。

◆オペラ『グスコーブドリの伝記』について

─最初に読んでみた時は、どう感じた。

壹岐/最初に読んだ時は、とにかく展開が早く感じて。最後に、みんなが幸せになったというストーリーはわかるけど、全体を通して登場人物のことを想像して読んだんですけど、それぞれの登場人物が何を思ってそこに出てきたんだろう、という疑問があったり。
なんか、比較的するっと読めたんですよ。一個一個のエピソードが短くて。○○ということがあって、そのことがブドリにどういう影響があったとか、そういうことは書かれていないのだなと感じました。

─ブドリが最後にする決断によって、ある種、重いとか、悲しい物語という印象を受ける人もいるんだけど。さっき、「最後みんなが幸せになる」、と言ったけれど、わりとそっちの印象が強い?

壹岐/そうですね、あんまり悲しい、という印象はないです。悲しいというよりも、ブドリに焦点をあわせると、ブドリのみんなを思う気持ちのほうが強い感じがして。
だからチラシを見て、こういった印象もあるんだ、と思ったんですよ。寒色系ではなくってもうちょっとふわっとした、暖かみのある感じのイメージを持っていました。

─今回は、寺嶋陸也さんの書き下ろしなんだけど、合唱をやっていた時、寺嶋さんの歌は歌っていた? 何か印象はある?

壹岐/歌ったことはないんですけど、聞いたことはあって。「冬と銀河ステーション」という曲は印象に残っています。 そんなにいっぱい聞いたわけでもないけれど、なんていうか、和音よりも横の流れ、というイメージです。

─和音よりも横の流れ。

壹岐/音の数が、少ない。少ないって言っていいのかな。一回の音が少ない。

─一度に鳴る音が少ないってこと。

壹岐/本当にそんなにいっぱい聞いたことがないので、たまたまかもしれないんですけど。なんか、縦よりも横って感じです。

─本公演は、2012年の『金色夜叉』以来で、新作初演というのは初めてだよね。やっぱり嬉しいものですか?

壹岐/そうですね。再演のものだと、映像を見たりしてやっぱり最初の人の印象が残ってしまうんですよね。でも新作だと0からだから、そこを考えることができるのが嬉しいです。

壹岐隆邦
2015年・おとゆいむし(※)公演 抒情幻想劇「ひのきとひなげし」ひのき役

※おとゆいむしとは…壹岐隆邦、沖まどか、小林ゆず子、川中裕子、島田大翼、高岡由季の6名による座内ユニット。2015年7月にコンサート「夏・聞こうぜ 2015 ヨーイ・ドン!」を開催した。(期間限定ブログ


(聞き手・田上ナナ子/こんにゃく座制作)