オペラにごりえ

忘られて、忘られはてて、
わが恋は、行く雲のうわの空に、消ゆべし

明治二十年代、新しい時代の光は、
まだ女たちの日々のくらしを照らすことはなく、
女たちは胸のなかに燃えるものをおしつつみ、
薄暗い光線のなかを歩いていた。
『にごりえ』のお力、お初、
『大つごもり』のお峯、
『十三夜』のお関、
『われから』のお町・・・。
それぞれの境遇の違いを越えて、
女たちの悲しみは連なっていく。
まことにわれは女なりけるものを・・・樋口一葉は日記にそう記し、
同時代を生きる女たちをえがいた。

いま、一葉のえがいた女たちの声に耳を傾ける。

『金色夜叉』(1995)『吾輩は猫である』(1998)にひき続き、
こんにゃく座がお届けする日本近代文学作品のオペラ化第3弾。


2000 9/13〜17 世田谷パブリックシアター

 
スタッフ
原作 樋口一葉
台本・演出 山元清多
作曲 萩 京子
美術 滝 善光
衣裳 八重田喜美子
照明 木下泰男
舞台監督 大谷地力 久寿田義晴
演出助手 久保田由佳里
宣伝美術 日下潤一(デザイン)+矢吹申彦(イラスト)

出演
竹田恵子 川鍋節雄 大石哲史 梅村博美 相原智枝 
岡原真弓 田中ふみ 井村宇夫 鈴木あかね 内山靖博 
鈴木佳奈 酒井聡澄 佐藤敏之 高野うるお


楽士
ヴァイオリン 手島志保  チェロ 山本祐ノ介  ピアノ 服部真理子


【主催・制作】 オペラシアターこんにゃく座

【共催】 くりっく世田谷文化生活情報センター

【助成】 文化庁芸術創造特別支援事業
     (財)三菱信託芸術文化財団
     (財)ロームミュージックファンデーション

 
樋口一葉原作の『にごりえ』のオペラ化

 『金色夜叉』(1995)『吾輩は猫である』(1998)にひき続き、こんにゃく座がお届けする日本近代文学作品のオペラ化第3弾です。
 樋口一葉は雅文を書く最後の作家として位置づけられています。書かれたことばとしてのみならず、その音色の美しさは、音楽との結びつきによって、新しいオペラを産み出す原動力になりました。
 一方、平安文学の担い手であった女性作家が文学史上姿を消し、樋口一葉の登場がその空白を埋める大きな役割を果たしたと言えます。近世以降の封建制度、また、男尊女卑の社会で女性に負わされていた重荷を、一葉はするどく、あざやかにえがき出しました。
 オペラ『にごりえ』は、「わたくしたちのオペラ」を求め続けるこんにゃく座からの、21世紀の世界へ向けてのメッセージです。

 台本・演出は『金色夜叉』『変身』と、こんにゃく座オペラのあらたな方向性をうち出した山元清多です。『にごりえ』の台本構造は前2作の手法をさらに発展させ、「にごりえ」を基調に「大つごもり」「十三夜」そして一葉最後の作品とも言える「われから」を挿入し、日記もからませながら、一葉の核心に迫ります。